ナイフを持ち、「本当の勝負は、ここからだ」と言いながら構える恭弥。
ダエルはニッと笑みを浮かべた。
相手のボスは、さっきまでと雰囲気が変わった恭弥を見て、警戒心を強めた。
恭弥はまず、足を刺されて痛みに震えている男を狙った。
背中から首を絞め、右側から首元にナイフを突き立てる。
大勢の男を前に、恭弥はファイティングポーズを取った。
「死にかけの分際で、さっさとくたばれ」
叫びながら向かってきた2人の男。
それぞれ、日本刀とナイフが武器だ。
恭弥はさっとかわし、相手の突進してくる勢いを生かして仕留めた。
一瞬立ち止まると、「かかってこい」と呟く。
一斉に向かってくる男たち。
先頭の男の首を狙い、次の男が日本刀を振り下ろす前に手首を抑えた。
そのまま脇腹へドスドスドスッ!
さらに続く男たちの猛攻を、身をかがめてかわしながら正確に攻撃を当ててゆく。
次の男の日本刀をナイフで防ぐと、足元に隙を見た。
男たちの足を狙い、低い姿勢で移動しながら、靴の上からドスドスドス!
男たちの叫び声が上がる。
屈んだ姿勢の恭弥が、低い位置から鋭い眼光で男たちを睨む。
その鬼気迫る気迫に、たじろく男たち。
恭弥は思う。
残りはざっと見て40人ほど。
全員あの世行きに…
と思いかけて、本来の目的が何なのかを思い出した。
最優先すべきは、人質となったダエルたちを救出すること。
連中を片付けるのは後回しでいい。
木に吊るされたダエルを助けるには、少々時間がかかる。
そこで恭弥は、まずは木に縛られている3人の警護人を助けることにした。
逆手に握っていたナイフを順手に持ち替え、右斜め前へと斬りかかる。
その方向に、ダエルたちがいるからだ。
襲いくる敵を斬りつけ、バットを振り下ろす男をすばやくかわす。
次の男の脛を狙ってナイフを振り、そこで警護人までの距離を確認した。
後ろから日本刀が振り下ろされたが、スタートダッシュを切った恭弥の足はかろうじて当たらず。
そのまま恭弥は、猫なみの俊敏さで、4人の男が振り下ろす刀やバットより先に駆け抜けた。
木の前にいた男が左手を伸ばしてナイフを繰り出してきたが、それを右に避け、アッパーカットするように顎の下からドスッ!
左からの攻撃を、背後にのけぞるようにしてよけ、後ろから太腿を狙ってきて日本刀は、バック宙でかわした。
男たちの群れを抜け、ついに警護人たちの木までたどり着いた。
すぐに反転すると、男たちはビクッとなってたじろぐ。
「まさかオレ一人にビビってんのか? かかってこいよ」
言いながらナイフを振って牽制し、再び木から離れる。
その背中を、木に括り付けられた警護人の一人が見送っていた。
警護人はふと、足元にナイフが置いてあるのに気づく。
恭弥はまた一人、日本刀を持った男の脇腹にナイフを突き立てていた。
すると、その男の背後から、別の男がナイフを突き出してきた。
左の太腿にブスッとやられ、「クソッ」とうめく恭弥。
「これで動きが遅くなるぞ」と周りに向かって男が叫んだ。
次の瞬間、その男は恭弥のナイフに仕留められていた。
「だからどうした?」と言いながら、恭弥は鋭い目で残りの男たちを睨む。
「化け物かよ」と、男たちから気弱な声が漏れる。
このまま一気に畳み掛ける!
そう決心し、恭弥は突っ込む。
木に縛られていた3人の警護人が、恭弥が置いていったナイフでロープを切り、解放されて立ち上がった。
1人はダエルの救出、2人が恭弥の援護へ。
「やられた分はやりかえしてやる」と、気迫も十分だ。
しかし恭弥は、「須賀先生を連れて逃げろ」と叫ぶ。
そのとき背中から、「その必要はありませんよ」と声が聞こえた。
京極だ。
その横には、大柄な仲間も連れてきていた。
「ここで決着をつけましょう」という京極に、敵を倒しながら「どうしてここに?」と尋ねる恭弥。
「安心してください。警察が動かないように手は打ってあります」
「社長も戦いに?」
「警護対象者を守るのが仕事です」
京極は恭弥の姿を見て、かなり疲弊していると判断した。
人質を救出したら、早く撤退せねば、と。
「少し後ろで休んでください」と言う京極に、
「そんな暇ありませんよ。早く先生を助けましょう」
「そうくると思いました。では3人で片付けましょう」
3人で敵の群れに突っ込み、かたっぱしから倒してゆく。
敵のナイフで襲われていた警護人の1人は、素手で刃先を掴んで回避していた。
そこを京極が助け、須賀先生を木から下ろすよう指示を出す。
3人の警護人がダエルを助ける間、敵を近づけぬよう奮闘する恭弥たち。
ダエルが木から解放され、地面に足をつけて立ち上がると、振り返った恭弥が嫌味を言った。
「助けてやったの何度目だ? 借り返せよ」
落ちていた日本刀を手に持ったダエルは、敵を見据えながら答える。
「今すぐ返しますよ」
そして恭弥の横に立ち、「下がっててください」と口にした。
「何言ってんだ? 一緒に片付けるぞ」と恭弥。
恭弥だけでも苦戦していたのに、相手が7人に増えたとあって、敵のボスは表情をしかめていた。

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