第120話

恭弥に声をかけて来たのは、黒川だった。

「総理が到着されました。ラノック大使とお話ししたいとおっしゃってます」

恭弥は訝しみ、詰め寄った。

「それはどういう意味です?」

ラノックが、通訳を通じて恭弥と黒川の会話を耳にした。

恭弥が何も聞かされていないと直感し、「安心したよ」とラノックは言う。

どういった方向で話が進んでいるのか、恭弥はいまいち掴みきれない様子だ。

直後、ラノックは黒川とともに、総理と話すために部屋を出た。

すると、入れ替わりに京極が入って来た。

「とりあえず、応急処置しておこう」

その言葉を受けて、恭弥は医務室に移動する。

恭弥が中年女医の処置を受ける間、ダエルはケタケタちょっかいを出してきた。

「なんてざまっすか」

「っせえ」

応急処置が済むと、恭弥の後ろに立っていたアンヌが、突然恭弥の髪をなでなでし始めた。

不思議に思う恭弥を、頬を染めて見ているアンヌ。

ラノックが現れ、アンヌに声を掛ける。

「そろそろ大使館に戻ろう」

アンヌは返事してから、恭弥に尋ねた。

「私たち、また会える?」

「もちろんですよ」と恭弥。

「どうして敬語なの? さっきみたいに、気楽に話してよ」

「ああ、わかった」

アンヌはまた頬を染め、恭弥を見つめた。

恭弥は立ち上がり、ラノックに向き合って伝える。

「前に、食事をご馳走すると言いましたよね。来週はどうでしょう? アンヌも一緒に」

「そうしよう」とラノックは微笑んだ。

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