恭弥に声をかけて来たのは、黒川だった。
「総理が到着されました。ラノック大使とお話ししたいとおっしゃってます」
恭弥は訝しみ、詰め寄った。
「それはどういう意味です?」
ラノックが、通訳を通じて恭弥と黒川の会話を耳にした。
恭弥が何も聞かされていないと直感し、「安心したよ」とラノックは言う。
どういった方向で話が進んでいるのか、恭弥はいまいち掴みきれない様子だ。
直後、ラノックは黒川とともに、総理と話すために部屋を出た。
すると、入れ替わりに京極が入って来た。
「とりあえず、応急処置しておこう」
その言葉を受けて、恭弥は医務室に移動する。
恭弥が中年女医の処置を受ける間、ダエルはケタケタちょっかいを出してきた。
「なんてざまっすか」
「っせえ」
応急処置が済むと、恭弥の後ろに立っていたアンヌが、突然恭弥の髪をなでなでし始めた。
不思議に思う恭弥を、頬を染めて見ているアンヌ。
ラノックが現れ、アンヌに声を掛ける。
「そろそろ大使館に戻ろう」
アンヌは返事してから、恭弥に尋ねた。
「私たち、また会える?」
「もちろんですよ」と恭弥。
「どうして敬語なの? さっきみたいに、気楽に話してよ」
「ああ、わかった」
アンヌはまた頬を染め、恭弥を見つめた。
恭弥は立ち上がり、ラノックに向き合って伝える。
「前に、食事をご馳走すると言いましたよね。来週はどうでしょう? アンヌも一緒に」
「そうしよう」とラノックは微笑んだ。

コメント