恭弥は左手に、首斬り屋は右手にナイフを持ち、戦いが始まった。
お互いに、素早い攻撃を繰り出す。
恭弥の左手首を左手で掴んだ首斬り屋は、恭弥の脚を狙ってナイフを振り下ろした。
恭弥はそれを、脚を横にずらしてサッと避けた。
一瞬の膠着状態で、互いに力比べをする。
首斬り屋は、ナイフを下から上に向けて振り上げ、恭弥の顎を狙った。
恭弥は上体をのけぞらせ、その攻撃もかわした。
そしてまた、互いのナイフを激しくかちあわせる。
恭弥の攻撃をバックステップでかわした首切り屋は、間合いをとった瞬間にこう聞いてきた。
「小僧、いくつだ?」
「聞いてどうする?」と恭弥。
「小僧にしては、いい腕だ。どこで覚えた?」
「教える義理はねえな」
「その生意気な口、二度と聞けねえようにしてやる」
首斬り屋が猛攻撃をしかけてきた。
一瞬にして複数の突きが繰り出されるほど、無駄がなくて速い!
猛攻撃を防ぎながら、恭弥はこう思った。
今の社長になんとかなる相手じゃない
首斬り屋が、ナイフをなぎ払うように使ってきたのを、恭弥は身をかがめてかわした。
すると今度は、首斬り屋の膝が恭弥の顔面を狙ってきた。
右手で防ぐと、今度は上からナイフが振り下ろされる。
恭弥はそれを、上半身を後ろにそらして避けた。
首斬り屋が拳を伸ばしてきたが、恭弥は後ろによけつつ、相手の胴体を蹴って反動で距離を取った。
さすがに今の攻撃は、当たっていれば倒されると感じたのか、恭弥はこう思った。
あぶねえ、死ぬとこだった…
ふと見ると、首斬り屋はかなり呼吸を乱している。
京極と同年代だけあって、若い恭弥ほどの体力はないのだ。
長引けばオレのほうが有利ってことか
そう思いながらも、恭弥はプライドをかけてそんな方法は選ばない。
突進して距離をつめ、右手に持ち替えたナイフを繰り出す。
首斬り屋はそれを交わし、こう思っていた。
強くても、小僧は小僧だ
死に急ぐなら、大歓迎だ!
首斬り屋は激しく攻撃してきたが、恭弥はそれを、なんなくかわし続ける。
そして、一瞬のタイミングに、「ニッ」と笑って見せた。
なめられて怒りが頂点に達した首斬り屋は、それまで以上に素早く攻撃してくる。
だが焦りからか、どこか大ぶりな突きが目立つようになっていた。
恭弥にとって、難なくかわせる攻撃だ。
一瞬の隙を見て取った恭弥は、首斬り屋の左脚に、ローキックを見舞った。
さらに、左手の拳で、鼻っ面に一撃を食らわせた。
それでも怯まず向かってくる首斬り屋の頬に、もう一度左拳を当てる。
首斬り屋は、すかさずその左腕をナイフで狙ってきたが、恭弥はさっと腕を引いて避けた。
そのままの勢いで、首斬り屋は右手のナイフを突き出してきた。
恭弥は冷静に避けて、首斬り屋の右前腕をナイフでドスッ!
左腕に負傷を負った首斬り屋は、止血をするか、このままナイフを振り続けるか、恭弥から少し距離をとって考えた。
恭弥のほうは、余裕の表情を浮かべつつ、指で相手を挑発する。
首斬り屋は考えるのをやめ、流れる血を指で飛ばして恭弥の目を狙った。
左腕でその血を防いだ恭弥に向かって、首斬り屋は突進する。
ナイフが恭弥の顔面にヒットしたかに見えたが、そうではなかった。
一瞬、恭弥の鋭い目が首斬り屋を睨み、それを見た首斬り屋はビクッとする。
次の瞬間、恭弥のナイフが首斬り屋の右腕を切り裂いた!
さらに、首斬り屋の背中から、左肩にドスッ!
地面に膝をついた首斬り屋は、不適な笑をもらした。
「お前みたいな小僧にやられるとはな…だが、俺が5歳若けりゃ、お前のほうが死んでいた」
恭弥は言い返す。
「ほざけ。オレが本当の歳なら、オマエはもうとっくに死んでる」
直立する恭弥を、斜め下から見上げた首斬り屋は、その姿にGOBの姿を重ね合わせた。
そして、畏怖する表情を浮かべた。
「やるなら、やれ」と、観念した首斬り屋。
「いや、その役目はオレじゃない」
そして恭弥は、場を京極に譲った。
首斬り屋の正面に立った京極は、戦場で死んでいった仲間たちを思い浮かべた。
そして、こう言った。
「行け」
耳を疑う恭弥だが、京極の意思は変わらない。
「今日はここまでだ。私の気が変わらないうちに、失せろ」
首斬り屋は、仲間たちに肩をかり、その場を後にした。
「ここで殺さなかったこと、後悔させてやる」と言い残して。
残った恭弥は、トドメを刺さなかったことについて尋ねた。
「後々面倒なことになると思ってな」と京極。
「ヤツを生かしても、同じじゃ?」
「私にも、わからない。この判断が正しかったのかどうかは」
ダエル、京極の部下たち、そしてラノックの部下たちが集まってきた。
ラノックの部下たちに対し、「今さら登場ですか」と軽く尋ねる恭弥。
部下たちは外国人だけあって、この国ではあまり派手には動けない立場だったと言い訳した。
ラノックについて恭弥が尋ねると、別ルートで戻っていることを、部下は伝えてきた。
いささか腑に落ちない恭弥は、こう思っていた。
安全な場所で、何もせずに問題解決か…

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