母を巻き込まないよう、約束を持ちかけてきた父。
「約束します」と答えたあと、恭弥から尋ねた。
あの日のこと(埼玉での戦い)について、何も聞かなくていいんですか、と。
すると父は、気にはなっているが、本音を言うと怖いんだ、と口にした。
恭弥が無事なら、それでいい、と。
その後、父が食事を済ませたタイミングで、黒川から電話があった。
これから会って相談したいという。
父の許可を得て、恭弥は黒川の元へ向かった。
黒川が指定した場所は、日営商事のオフィスだった。
黒川は辞表を出したはずなのに、と訝しんだ恭弥は、そのことについて軽く尋ねた。
「詳しくは私の部屋で」と黒川に言われ、部長室へ移動する。
ソファに腰掛け、会話を始める2人。
黒川はまず、個人的に集めたという、周防の情報(USB)をくれた。
そして、本題へ。
黒川いわく、またしても北朝鮮の特殊部隊が動きを見せた、とのこと。
中国で訓練を受け、第三国を通じて日本に来る可能性が高い。
「精鋭を送り込めば、ラノック大使の暗殺や各種テロが成功すると踏んでいたのでしょう。しかし、西さんにすべて台無しにされた」
だから連中は、より多くの人員を送ることにしたのだろう、と。
そういった情報を掴むためにも、7名の犠牲が出ている、とも。
情報を掴むためだけに犠牲を出していると聞いて、恭弥はため息を漏らした。
黒川は少し俯き、恭弥が思いもしない言葉を発した。
「今度は、こちらから仕掛けます」
モンゴルにいる北朝鮮の特殊部隊を叩く、と。
「自衛隊が戦う、ってことですか? そんなことが…」
驚く恭弥に、黒川は淡々と続けた。
総理の許可も出ているが、確かにこの国の憲法により、武力行使は不可。
だからこそ、今回の件に関する人物の指紋や写真は、すべて消去する、と。
つまり…
「私はもう、この世には存在していない人間です」
詳しい状況は、恭弥には追って伝えるという。
恭弥は率直に、「なぜ死ぬ前提で話してるんです?」と尋ねた。
黒川は快活に笑い、自分たちの仕事は死と隣り合わせですから、と言って誤魔化そうとした。
しかし恭弥には見抜かれ、本音を話し出した。
「実は、退路が確保されていないのです」
正規ルートでモンゴル入りは可能だが、作戦終了時に帰るすべがない、という意味だ。
もし日本政府が黒川たちの帰国を支援すれば、作戦に日本が関わっていると公表するようなものである。
黒川はそこまで述べずとも、恭弥は話の裏側を読み取っていた。
「なぜそこまでするんです?」
「ユニコーン反対派に対する警告です。ユニコーンを止めたいなら、それなりの覚悟をしておけ、と」
作戦については、京極にも話していないらしい。
「オレも連れて行ってください」と、恭弥は真っ直ぐな目で希望した。
黒川はキッパリ、「お断りします」と答えた。
恭弥にはあくまでも、(表側で行われる)ユニコーンプロジェクトをよろしくお願いします、と。

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