第100話

愛子たちに向けて、薫への仕返しを促す恭弥。

床に正座させられた薫は、何をされるのかと怯えて冷や汗を流している。

愛子や美咲に対し、「一発殴ってやれ」と恭弥が言う。

愛子も美咲も、「そんなことしたくありません」と遠慮するだけだった。

「したくないんじゃなく、できないんじゃねえのか?」

核心をつくセリフを放ったあと、恭弥はさらに続けた。

「仕返しを恐れてビンタもできねえなんて、腰抜けめ。一生そのまま生きてろ」

愛子は俯きながら、「そんなんじゃないんです。せめて私は許してあげようと…」

「許す? そんな権限がオマエにあんのか?」

恭弥は、愛子が薫より弱く、皆にもそう思われていると口にした。

そして誰より、愛子自身がそう思っているとも。

「許すってのは、オマエが薫より強い場合に成り立つんだ。だから薫に勝たなくちゃならん」

それでも愛子は、自分が手を上げるのは控えたいようだった。

「私はただ、もうこんなことが起きなければと思って…」

「まだ自分のことを他人任せにすんのか?」

そう言われて、愛子はちょっとハッとなった。

恭弥は続ける。

「オマエの希望通り、これからは薫が何もしてこねえかもな。だがそれはオレがいるからだ。オレがいなけりゃ元通りだ」

恭弥の話に耳を傾けながら、愛子は薫のことを見下ろした。

「今ここでオマエが薫に勝てば、この世にオマエと薫しかいなくなっても恐れなくてすむ」

そして恭弥は、愛子の気持ちを変える言葉を放った。

「それでもできねえってんなら、オレが薫の顔面を役に立たなくしてやる。顔がコイツの最大の取り柄だからな」

この言葉には、さすがの薫も衝撃を受けた。

薫はすぐさま恭弥に縋り付いて、自分が悪かったと許しを乞う。

「見ろよ」と、恭弥は厳しい表情を見せた。

「決定権はオマエ(愛子)にあるってのに、コイツはオレに縋ってくる」

困惑の表情を浮かべる薫の横顔を見て、愛子はついに決心した。

「やります」

薫の前に立った愛子は、拳を握りしめていた。

目の前に立った愛子を見上げて、薫は項垂れながら許しを乞う。

「私が悪かったわ。これまで私のおかげで稼げたし、人気も出たじゃない」

その言葉を聞き、愛子はわなわなと拳を震わせた。

しかしすぐに、握力を解放して力を抜いた。

項垂れる薫は、下を向きながらニヤリとほくそ笑む。

許してもらえると思ったようだ。

直後、薫の左頬に衝撃が走った。

愛子がやったのだ。

「あんたのおかげ? ふざけないで。私を利用してただけでしょ」

涙を浮かべながら、愛子は何度も薫をぶった。

今までのうっぷんも言葉にしながら、何度も何度も。

「もう我慢なんてしない。やられたら数倍にしてやるわ」

髪を乱し、頬も腫れ、涙と鼻水を流し、ボロボロになった薫は、声をあげて泣き喚いた。

プライドが高く、人を見下してばかりだった薫が、ちょっと叩いただけでこんな姿を見せるなんて…

「どうってことねえだろ?」と恭弥が言う。

「オマエは今まで、自分で作り上げたコイツのイメージにビビってただけなんだ」

実は薫がとても弱い人間だと知って、愛子は「そうですね」と答えた。

「オマエも他のヤツを見下したりすんなよ。どれだけ大女優になってもな」

愛子は俯きながら、「はい」と答えた。

そんなやりとりを見ているミシェルは、ハートを浮かべながらうっとりしてる。
デイビッド大柴と薫を見下ろして、恭弥は最後に釘を刺した。

これから先、懸命に生きてるヤツの邪魔をすんな、と。

そして、復讐ならいつげも受けて立ってやる、とも。

3人の女性を引き連れて去ろうとしたとき、練習生の美咲が声をかけてきた。

「私、まだ何もしてないんですけど」

その言葉を聞いて、うっかりしてたとばかりに恭弥は振り返った。

大柴と薫は、どんよりするばかりだ。

車に乗った恭弥に、コーヒーのお誘いをしてくるミシェル。

でも恭弥は、自分がいちゃ気楽に話もできないだろうと言って、さっさと去っていった。

ミシェルの背中に、愛子が声を掛ける。

「代表って、ほんと素敵ですよね。生まれ変わった気分です」

隣にいる美咲も、うんうんとうなずいている。

ドラマを頑張るという愛子に、「惚れちゃダメよ」とミシェルはさりげなく釘を刺した。

そしてすぐに、つい口走ってしまったことを誤魔化すため、適当に言い訳するのだった。

デイビッド大柴は、スマホで何者かに連絡していた。

「力をお借りしたくて…」

電話を切ると、恭弥への恨み節を口にしながら、歯を食いしばるのだった。

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