第129話

福生市と聞いた恭弥は、思い当たる節がありそうな表情を浮かべた。

ラノックは、恭弥の大学について話し始める。

2学期になったら、フランスの大学から入学許可証を送ってくるそうだ。

「日仏会館で基本教育を受けられるよう、私から公文書を出しておくよ。そうすれば学校に行かなくてもよくなる」

「ありがとうございます」

ラノックは、日本の情勢についても語った。

「私がここの赴任したのは、次期政権になるまでの安全確保のためだったんだ。この国はとても治安がよく、銃規制も厳しくて暗殺の危険も少ないからね」

「でも、ゴルフ場で例の件が…」

「そのため、本国から帰国するよう連絡が来たんだ」

でもラノックは、中国とロシアを相手にするために、残ると伝えたらしい。

そんな話をしているうちに、目的地に着いた。

縦田基地だ。

どうやら飛行機に乗るらしい。

大型のジェット機に向かって歩く、ラノックと恭弥。

ラノックに対し、敬礼をする者たちがいた。

その後ろには、軍服に身を包んだ傭兵たちの姿もある。

みな精悍な顔つきで、その面構えを見ている恭弥は、傭兵時代を思い出した。

でもさすがに知り合いはいないはず、とも思っていたら…

一番端にいた男は、かつての恭弥の部下『ジェラール』だった。

その当時について、恭弥は思い出す。

傭兵時代の恭弥は、新入りのジェラールを仲間たちに紹介した。

ジェラールは、緊張の面持ちを浮かべている。

戦場にて、爆撃だらけの中、ジェラールは目を閉じて不安を感じていた。

そんなジェラールに、恭弥は声を掛ける。

「死にたくないなら、オレから離れるな」

回想を終えた恭弥は、目の前の男がジェラールであることを確信していた。

生きてたのか、と思いながらフッと笑う。

ジェラールのほうは「?」を浮かべるだけだった。

飛行機に乗った恭弥は、ラノックから紅茶を振る舞われる。

飛行機は離陸し、紅茶のカップは少し揺れていた。

「君を読んだ理由はこれだよ」

ラノックは、ある書類を手渡してきた。

それを見て、恭弥は表情を引き締めた。

「戦死した傭兵隊員に関する記事だ」と、ラノック。

ラノックは続ける。

西恭弥という傭兵がいて、故郷は日本、同僚からの評判はとても高く、敵からゴッド・オブ・ブラックフィールド、通称「G・O・B」と呼ばれていたそうだ、と。

「ムッシュ西。君はゴット・オブ・ブラックフィールドなのかい?」

恭弥は思う。

いい機会だ、これでオレの正体についていちいち説明しなくてよくなる

でも、答えられない自分がいて、もどかしく感じるのだった。

「質問を変えよう」とラノックは言った。

「ここの隊員の中に、コッド・オブ・ブラックフィールドの元同僚がいる。誰か分かるかい?」

少し間を空けたあと、恭弥はつぶやく。

「ジェラール・G」

それを聞いて、ラノックは表情をこわばらせるのだった。

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