福生市と聞いた恭弥は、思い当たる節がありそうな表情を浮かべた。
ラノックは、恭弥の大学について話し始める。
2学期になったら、フランスの大学から入学許可証を送ってくるそうだ。
「日仏会館で基本教育を受けられるよう、私から公文書を出しておくよ。そうすれば学校に行かなくてもよくなる」
「ありがとうございます」
ラノックは、日本の情勢についても語った。
「私がここの赴任したのは、次期政権になるまでの安全確保のためだったんだ。この国はとても治安がよく、銃規制も厳しくて暗殺の危険も少ないからね」
「でも、ゴルフ場で例の件が…」
「そのため、本国から帰国するよう連絡が来たんだ」
でもラノックは、中国とロシアを相手にするために、残ると伝えたらしい。
そんな話をしているうちに、目的地に着いた。
縦田基地だ。
どうやら飛行機に乗るらしい。
大型のジェット機に向かって歩く、ラノックと恭弥。
ラノックに対し、敬礼をする者たちがいた。
その後ろには、軍服に身を包んだ傭兵たちの姿もある。
みな精悍な顔つきで、その面構えを見ている恭弥は、傭兵時代を思い出した。
でもさすがに知り合いはいないはず、とも思っていたら…
一番端にいた男は、かつての恭弥の部下『ジェラール』だった。
その当時について、恭弥は思い出す。
傭兵時代の恭弥は、新入りのジェラールを仲間たちに紹介した。
ジェラールは、緊張の面持ちを浮かべている。
戦場にて、爆撃だらけの中、ジェラールは目を閉じて不安を感じていた。
そんなジェラールに、恭弥は声を掛ける。
「死にたくないなら、オレから離れるな」
回想を終えた恭弥は、目の前の男がジェラールであることを確信していた。
生きてたのか、と思いながらフッと笑う。
ジェラールのほうは「?」を浮かべるだけだった。
飛行機に乗った恭弥は、ラノックから紅茶を振る舞われる。
飛行機は離陸し、紅茶のカップは少し揺れていた。
「君を読んだ理由はこれだよ」
ラノックは、ある書類を手渡してきた。
それを見て、恭弥は表情を引き締めた。
「戦死した傭兵隊員に関する記事だ」と、ラノック。
ラノックは続ける。
西恭弥という傭兵がいて、故郷は日本、同僚からの評判はとても高く、敵からゴッド・オブ・ブラックフィールド、通称「G・O・B」と呼ばれていたそうだ、と。
「ムッシュ西。君はゴット・オブ・ブラックフィールドなのかい?」
恭弥は思う。
いい機会だ、これでオレの正体についていちいち説明しなくてよくなる
でも、答えられない自分がいて、もどかしく感じるのだった。
「質問を変えよう」とラノックは言った。
「ここの隊員の中に、コッド・オブ・ブラックフィールドの元同僚がいる。誰か分かるかい?」
少し間を空けたあと、恭弥はつぶやく。
「ジェラール・G」
それを聞いて、ラノックは表情をこわばらせるのだった。

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