第144話

「今度はこっちから攻撃する番です」

と口にした恭弥に、黒川からの歯止めがかかった。

情勢的にも我々が不利だし、何よりも恭弥に何かあったら全て終わりです、と。

しかし恭弥は引き下がらない。

このまま黙ってまた誰か殺されたりしたら、手遅れです、と。

それでも黒川は、恭弥の意見には反対だった。

「ご理解ください」と、真剣な表情で同意を求める。

少し考えたあと、恭弥は「わかりました」と答えた。

ダエルはその様子を、思うところがある様子で横目に見ていた。

ふと、黒川のスマホが鳴った。

通話を終えた黒川は、とりあえず警察とは話がついたため、すぐに逮捕される心配はなくなったと伝えてきた。

しばらくはマスクや帽子で顔を隠す必要はあるが、とりあえずは帰っても良い、と。

ということで、恭弥とダエルは、その場をあとにする。

暗い夜道を歩きながら、ダエルは恭弥に声をかける。

「コーヒーでも飲んでかないっすか? 俺たちだけで話すこともあるでしょう」

そんなわけで、喫茶店の一席で話を始める。

埼玉での戦いについて少し語った後、ダエルはこんな言葉を口にした。

「やるときは俺も連れてってください」

「なんのことだ?」と、とぼける恭弥。

「神代から情報を得たら、すぐ乗り込むつもりっすよね? 黒川さんには納得したように見せまてしたけど、俺の目はごまかせねえっす」

言葉に詰まる恭弥に、ダエルは続ける。

正直言うと、転生前の自分には未練がない。

今は仕事もあるし、家族もいて、しかもリーダーのおかげで大金持ちにもなれた。

だから満足している、と。

「それでも、もしリーダーの身に何かあったら、俺は迷わず今の生活を捨てるっす」

だから仲間として認めて欲しい、というダエルに、恭弥は言い返した。

「誰が仲間じゃないと言った?」

恭弥いわく、転生前とはフィジカル(肉体)が違うから、巻き込みたくないだけだ、とのこと。

すると、ダエルのほうも言い返してくる。

「もしオレが、今のリーダーは区隊長の体じゃないといって、リーダー扱いするのをやめたら、どう思うっすか?」

動くときは、以前のダエルと思って頼って欲しい、というのがダエルの言い分だ。

「わかったよ」と、恭弥は目を閉じてつぶやく。

「情報が入ったら、乗り込むぞ。オレたち2人で」

ダエルは満足し、「ラジャ」と微笑んだ。

そして恭弥は、ダエルに武器の調達を頼む。

スミセンと戦ったときに使った、鉈(ククリ)という武器を。

帰宅した恭弥は、母から父の容体が悪いと聞く。

「首と腰が痛くて眠れないって」

心配する恭弥に、母は別の件で問いかけてきた。

例の動画の件だ。

ナイフを振り回す恭弥を見たと、知り合いからたくさん連絡がきたそうだ。

「オレじゃないですよ。映画のPR動画だそうです。母さんは見たんですか?」

「怖くて見てないわ」

「もしそれがオレなら、今ごろ警察か病院にいるはずですよ」

「そうよね」と、母は納得して微笑んだ。

寝室から父の声が聞こえ、恭弥は部屋に入った。

軽く会話すると、ようやく父は安心して眠りについた。

自室のベッドに横になった恭弥は、薄暗い部屋で以前の恭弥に対して誓いを立てる。

先に謝っておく

オマエが大事にしてた父さんと母さんは、オレにとっても大事な人になった

意図的に(肉体)を乗っ取ったわけじゃないが、申し訳ないと感じてる

その代わり、全員を俺が守ってみせる!

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