第133話

ラノックが去り、部屋で食事を済ませた恭弥は、係の者から受け取ったスーツを着て外に出た。

フランスの兵隊たちが休んでいるのを目にし、休憩中かと思って近づこうとする。

しかし、手ぶらではラノックをバックにイキがってると思われるだけだと判断し、いったん引き返して飲み物を用意してきた。

トレーに並んだ紙コップを見て、ジェラールが尋ねてくる。

「それはなんだ?」

「飛行機のご馳走になったお礼だ」

するとジェラールのほうから、「一本吸うか?」と聞いてきた。

「遠慮しとく」

ジェラールも、他の傭兵たちも、恭弥の差し入れをありがたく頂戴していった。

その後、一服し始めたジェラールを見て、恭弥は気づく。

どうやらジェラールは、飛行機での恭弥のアドバイスに従い、ジッポに石油を入れたらしい。

「日本人か?」

「ああ。休暇で来るなら、トンカツご馳走してやるよ」

ジェラールはふと、怪訝そうな表情を浮かべた。

「前に同僚だった日本人も、同じ料理をすすめてきた」

ジェラールはさらに、恭弥の話し方も気にした。

いったんタバコで気分を落ち着けたジェラールに、恭弥から尋ねる。

「危険を感じたらすぐに引き返せ。勲章なんか飾りでしかない。区隊長の真の勲章は、胸につけた鉄なんかじゃなく、仲間の命だ」

癇に障ったように眉根を顰めたジェラールは、「軍にいた経験でもあるのか?」と聞いてきた。

「いや。だが、肝に銘じておけ」

そこへラノックがやってきたため、ジェラールを含めた傭兵たちは敬礼を見せた。

恭弥が去ると、ジェラールは怪訝そうに「なんなんだ、アイツ」と思うのだった。

車の中で、シャフランに会ってくれるという恭弥に、お礼を述べるラノック。

「大使のためなら、このくらい」と恭弥はさわやかに答える。

いかにも厳重そうな建物に到着し、車を降りて壁の前に立った。

ドアすらなかったが、隠し扉が現れて中(エレベーター)に踏み込んだ。

エレベーターも、制御室でのみ操作されているらしい。

扉が開くと、2人の武装兵が待ち構えていた。

2人の案内を受け、重々しい扉の前に立つ。

2人の武装兵が同時に指紋認証したことで、扉が開いた。

最先端の生体認証のあとは、大きめの南京錠だ。

2人の武装兵が鍵を開け、さらに最後の扉を開ける。

鉄格子の中にいるシャフランは、生命維持装置を口にあてがい、ベッドに横たわった状態で恭弥に目を向けてきた。

「中にはオレだけ入ります」

恭弥は鋭い表情で、ラノックにそう言った。

「ああ見えても、兵士の一人や二人は瞬殺できるヤツです」

理解したラノックは、鉄格子に恭弥だけ入ることを許可した。

ベッド脇に立った恭弥を見て、シャフランは口元を緩めた。

「西恭弥、待ってたぞ。やっと会えたな」

「殺気を消したらどうだ?」

「漏れていたか。ふはは」

2人の会話を、ラノックは腕組みしながら格子の外で見ていた。

陰湿な笑みを見せるシャフランは、意外な言葉を口にする。

「どうだ? 俺と取り引きしないか?」

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