第134話

シャフランから取引を持ちかけられた恭弥は、毅然とした態度でこう言った。

「断る」

シャフランはそれでもまだ余裕で、「話くらい聞けよ」と促してきた。

「聞くだけ無駄だ」

シャフランに背中を向け、去ろうとした。

しかし、「ゴッド・オブ・ブラックフィールド」と呼ばれて立ち止まり、再びシャフランの横に立った。

シャフランは、ブラックヘッドやイギリスについて話し出す。

「前に俺がお前に敗れたとき、イギリスは動かなかった。それは、俺が裏切ったと思っていたからだそうだ。しかし今、奴らは俺をここから出そうと必死だ。なぜだろうな?」

牢屋にいる人物が得られる情報じゃないため、恭弥はすぐに察した。

内通者がいる、と。

「お前が本当に傭兵の西恭弥なら、それは間違いなくブラックヘッドと関係している」

恭弥はシャフランを見下ろしたまま、黙って聞いていた。

「俺はイギリスとも取り引きしている。ここから出してくれるなら、ブラックヘッドを探すのを手伝ってやると」

恭弥が生まれ変わったなら、その理由に興味がないはずがない。

シャフランはそう思い、恭弥に鎌をかけているのだった。

しかし、恭弥の答えは一貫していた。

「地獄に堕ちろ。オマエを待ってるヤツがいるだろ」

今度こそ、恭弥は牢屋をあとにした。

シャフランは笑い声をあげたが、恭弥は構わず、ラノックとともに扉の外に出ていった。

シャフランと会ったことで、いくつかの収穫はあった。

ブラックヘッドが、恭弥(の生まれ変わり)に関係しているであろうこと。

シャフランに内通者がいるであろうこと。

「それを隠しもしないのだ。何かあるのだろう」と、後部座席に乗ったラノックは、隣に座る恭弥に向けて言った。

恭弥は内心で、いっそ処刑すべきなんじゃ、と考えていた。

しかしラノックは、そんな恭弥の心を見透かすように、「まだシャフランからは聞き出せることはある」と言うのだった。

先を見通すようなラノックの横顔を見て、恭弥は思う。

この人が敵じゃなくて良かった、と。

ラノックには何か考えがあるらしく、ユニコーンプロジェクトの公表もしばらく伏せよう、と提案してきた。

恭弥は承諾し、飛行機で日本へ。

すっかり日が落ちたころ。

飛行機が着陸し、恭弥はラノックとともに降り立った。

最後にジェラールに挨拶しとくべきか、と考えたが、やめておいた。

死ぬんじゃねえぞ、と心の中でエールだけ送って。

ラノックの車で、家の近くまで送ってもらった恭弥は、スマホで黒川に連絡を入れた。

「すぐにお話したいことがあるんです。この前のカフェで会えませんか?」

「了解しました。京極を連れて行きます」

カフェで先に待っていた恭弥の前に、黒川と京極が現れた。

恭弥は、フランスでシャフランに会ってきたことなど、伝えるべき内容を話した。

(おそらく、ユニコーンの進展具合についても。)

話し終えて解散するころには、さらに夜も更けていた。

家に帰ろうか、と思ったが、こんな時間じゃ両親を起こしてしまう。

ダエルを呼ぼうか、とも考えたが、ダエルにも家族があると思って却下した。

こんな時間にこそ活発になるヤツといえば…

恭弥が電話したのは、神代だった。

連絡を受けた神代は、嬉しそうに「おお、西」と快活な声を発する。

どこにいるかを聞いた恭弥に、神代は答えた。

「ネクサスホテルだ」

恭弥は表情を歪め、「またかよ」と口走るのだった。

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