父と握手するシャフラン。
その後方には、日本女性をナンパするスミセンの姿があった。
シャフランから注意を受けてやってきたスミセンを見て、恭弥はさらに驚く。
父が相手に恭弥を紹介すると、シャフランは恭弥の発音に聞き覚えがあると言う。
今度はシャフランがスミセンを、アジアの営業担当理事と紹介した。
女好き理事だろ、と心で呟く恭弥。
父が席に座り、恭弥はその後ろに立っている。
ほかに3名、父の会社の社員が交渉の場についていた。
向かい側には、シャフランとスミセンが並んで座っている。
注文を聞きにきたウェートレスに、色目をつかうスミセン。
それを鋭い目で嗜めるシャフラン。
まずはシャフランが、恭弥の名前について、よくある名なのかと尋ねてきた。
「珍しい名前じゃありません」とフランス語で答える恭弥。「(同じ名前の)お知り合いでも?」
「親しみを感じる名前でね」というシャフランに対し、
「私もお二人の名前に聞き覚えを感じてたところです」と恭弥は返した。
運ばれてきたドリンクを飲みながら、シャフランはフランス語で交渉を始めた。
まずは父から、独占契約の条件になっている500台を緩和するようお願いした。
シャフランはあっさりと、契約通り50台を購入いただいて、それを流通してOKと言ってきた。
「清水モータースにも同じ条件で販売します。会社同士で競争を行えば、皆にとってプラスになるでしょう」
人の神経を逆撫でするシャフランの口調を聞き、恭弥はいかにもシャフランらしいと感じていた。
父は、50台の残金を支払えば、シープのメンテナンス独占権をいただけるという、契約書の話をする。
シャフランは、3つの条件が整っているなら独占権を認める、と言ってきた。
条件とは、規定に沿った施設、常備が必要な部品、そして人材の3つだ。
「本当ですか」と表情を明るくする父。
でもシャフランは、独占権は父の会社が購入した車にだけ有効だと言う。
清水モータースは同じ条件で前向きな返事をくれた、とも。
あまりにも不当なやりとりに、部下の1人がシャフランに食ってかかった。
法的手段に訴えると。
でも恭弥は、シャフランには法的手段は通じないと思っていた。
実際にシャフランは、その言葉は社の意見と認識する、と言って立ち上がった。
宣戦布告を受けて立つ、と言わんばかりに、背中を向けて去ろうとする。
その背中に声をかけたのが恭弥だった。
1週間と一晩だけ時間をください、と。
でもシャフランにしてみれば、決定権のない恭弥の言葉じゃ交渉にはならない。
恭弥が父に目配せすると、父は「何か良い手があるのか?」と聞いてきた。
「今はありません」と正直に答える恭弥。
社員たちは、1週間で何もできなければ反論できなくなる、と言って反対する。
この場は謝罪し、再交渉したほうが良い、と。
シャフランの人柄を知っている恭弥は、日本語で声を張り上げた。
「下手に出れば、もっとつけあがりますよ」
父は頭を抱え、少々考え込んだが、最終的にはこう通訳させた。
「恭弥の言葉を私の言葉とし、恭弥の決定を私の決定とする」
シャフランは、1週間で500台処理できなければ、メンテナンスの件も諦める、という条件を確認してくる。
「心配ご無用です」と恭弥は答えた。
「ところで」とシャフランは聞いてきた。「さっきの一晩とはどう言った意味です?」
「今にわかります」と恭弥は不適な笑みを浮かべた。
シャフランは、恭弥は自分の知り合いとよく似ている、と言ってきた。
そんなことより、恭弥は今の条件でOKなのかと、シャフランに問いかけた。
「いいでしょう」とシャフランは答え、一晩とはいつなのかを確認してきた。
「追って連絡します」
余裕を持って連絡してください、と言うシャフランは、恭弥とがっしり握手した。
相手が本当にシャフランとスミセンであるのなら、恭弥には勝算があるのだった。
引用:ピッコマ

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