第132話

ラノックに紹介された恭弥は、5人のお偉方とハグした。

席に着き、会合が始まる。

まず、口髭の男が切り出した。

「我々はもう、ラノックの友として、君の頼みを受け入れている」

飛行機では聞いていなかっただけに、恭弥もちょっと驚いた。

すでにラノックが手を回してくれていたようだ。

当のラノックも、さわやかな表情で宣言した。

「今すぐにでも公表しよう。日本を含むユニコーンプロジェクトを」

先手をとって望みを叶えてくれたことに対し、恭弥は思う。

オレの負けだ

しかし、少しだけ待つべきとの声も上がった。

そんな声にも、ラノックは柔和な表情で対応する。

「我々が手を差し伸べれば、彼も我々を助けてくれるだろう」

恭弥が助けてくれるという意味を掴み切れないのか、5人は無反応を示した。

何か発言すべきと判断した恭弥は、フランス語で話し出す。

「大使はオレを友と認め、ユニコーンというプレゼントもくれました。大使と皆さんには心から感謝します」

さらに恭弥は、日本の情勢についても語った。

仲間が窮地にあるため、皆さんのお力添えをお借りしたい、と。

すると、先ほどの口髭男が、ラノックに尋ねた。

「発表後の覚悟はできてるのか?」

ラノックはさらりと答える。

「私も娘も、ムッシュ西に命を助けられた。それに日本でホットラインが必要な案件は、彼を介して解決できるよ」

すると別の男が、まだ別の意見を述べたてる。

「しかし、イギリスはまだ口を閉じてるぞ」

これにもラノックは、自らの考えで切り返す。

「イギリスは最後まで口を開きはしないだろう。発表後は、口を閉じたまま大人しく従うはずだ」

ラノックの決意を聞き、5人の面構えが変わった。

ここでラノックは恭弥に対し、「ここからは我々で話し合うから、部屋で休むといい」と伝えてきた。

案内に従い、恭弥は部屋へと移動する。
恭弥が去ったあとも、ラノックは恭弥への信頼を口にした。

「絶体絶命の状況で誰かに連絡できるとしたら、私は迷わず彼を選ぶよ」

ラノックは、その場にいる5人にも、恭弥との親睦を深めるよう進言した。

「日本政府が彼の立場を確立することで、我々の安全は保証される。私がユニコーンの公式発表を急ぐ、もう一つの理由だ」

部屋に案内された恭弥は、ベッドに横になって考え始めた。

あの場にいた奴らは、ブラックヘッドやオレの過去について何も聞いていないようだ

ラノックはいったい、何を考えてるんだ?

ドアがノックされ、ラノックが姿を見せた。

ラノックはまず、ユニコーンの公式発表が早めに実施されることが決まった、という報告をしてくれた。

テーブルに移動すると、恭弥から尋ねた。

「食事したら、シャフランに会いに行くんですか?」

「君がよければね」

恭弥はさらに、公式発表のあと、日本の情勢がどうなるかを聞いた。

「北朝鮮への送金問題もあるが、公表されたらアメリカが鎮火してくれるだろう。メディアもすぐに、誤報だったと発表するはずだ」

30年くらいは今の政権が続くと、ラノックは見ていた。

ラノックの意見を聞いた恭弥は、本音を打ち明けた。

政治には興味がなく、自分の周りの人たちを守れれば十分だと。

「本当に、金や権力より、周りの人たちの安全が大事なのかい?」

「そうじゃないなら、(生まれ変わる前に)シャフランに殺される心配のない高い地位を得ていたはずです」

「確かに」

納得したラノックは、頼み込むような表情を浮かべて聞いてきた。

「もし私に何かあったら、アンヌを守ってくれるかい?」

何かあったと直感し、恭弥はまずその心を尋ねた。

ラノックは答える。

秘密に進めていたプロジェクトを公表すると、ゴルフ場の件が可愛く思えるほどの大事件も起こりかねない。

それでも娘だけは助けたいんだ、と。

「君が約束してくれるなら、安心できると思ってね」

恭弥は迷った。

約束したら、面倒ごとに巻き込まれる可能性もある。

また前の人生のように、暗殺される可能性も。

でも恭弥は、まっすぐな目で答えた。

「命の限り、全力で守ります」

「ありがとう」とラノックは微笑んだ。

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