恭弥とダエルは、テーブルを挟んで向かいに座る黒川の話に耳を傾けていた。
黒川は、内閣の現状について切り出した。
「野党が内閣情報官の座を狙っています」
鉄道計画のためには港の再整備が必要である。
野党は、その案を通す代わりに、内閣情報官の任命権を欲しているという。
しかし、もし野党の望みを叶えてしまうと、政権交代が起きてしまう。
本来なら、内閣情報官には総理の助力者を任命するのが筋だ。
これを野党に渡せば、総理と政府が野党の監視下に入り、脅しにも使われてしまうそうだ。
「やましいことがなければ問題ないのでは?」と恭弥が尋ねた。
黒川はたんたんと続ける。
「欠点のない人間は稀にいるかもしれない。でも、すべての分野でまったく欠点のない政府などありません。総理とは、そんな集団の最高責任者なのです」
納得した恭弥は、「解決策は?」と聞いた。
「この国がユニコーンに参加することを、欧州側に公表してもらうのです」
「つまり、ラノックにかかってるってことですね」
「はい」と黒川は言った。
黒川が辞職した話についても軽く触れてから、恭弥は自分の意見を述べた。
「オレの警護より、UBコップの訓練を担当させたらどうです?」
「西さんの安全が最優先です」と、黒川は言う。
恭弥はそれでも、UBコップの成長が必要だと言い張った。
ダエルも同じ意見で、訓練さえしていれば一方的にやられたりしなかったはず、とゴルフ場での件に触れた。
結局は黒川が折れて、京極と話し合ってみると言ってくれた。
翌朝。
目覚めた恭弥は、ラノックからの電話を受けた。
軽い挨拶を交わした後、ラノックは頼みごとをしてきた。
「今日から数日、時間をくれないかな? 一緒に行きたいところがあるんだ」
恭弥がOKすると、ネクサスホテルで待ち合わせすることになった。
また数日ほど出かけることになり、恭弥は両親への言い訳を考える。
ご飯を食べながら、恭弥は正直に打ち明けた。
どこに行くかはわからないが、大使と地方に行くことになったと。
「危険な場所じゃないのよね?」と母は心配そうな表情を見せる。
「まさか。大使と一緒ですからね」と恭弥は返した。
「なら、父さんが送ろう」
ってことで、父の車で移動することになった。
車の中で二人きりになると、父は尋ねてきた。
「で、本当はどこに行くんだ?」
恭弥は、目的地は本当に聞いてないことを打ち明ける。
父は、自分が愛用している出張用のカバンを使うよう言ってきた。
恭弥はその好意をありがたく受け取るのだった。
「家には連絡しなさい。母さんを心配させないように」
「わかりました」
ネクサスホテルに到着し、一人になった恭弥は、ダエルに連絡を入れた。
しばらくラノックと一緒に行動することになった、と。
黒川にも連絡すると伝え、外に出た。
ちょうどラノックが乗った車が到着し、二人は後部座席で会話を始める。
軽くアンヌについて話した後、恭弥は尋ねた。
「どこに向かうんですか?」
「福生市というところだ」
恭弥には何か思い当たる節があるようで、そこって確か、と思うのだった。

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