恭弥の父を乗せた車が道路を走る。
その後ろに、護衛人たちが乗った車が続く。
さらに後ろを、例のワゴン車が追っていた。
交差点を右に曲がったところで、ワゴンの後ろから別の車が加わってきた。
黒いセダンと、白いトラックだ。
いっぽう、ダエルが運転する車は、スピードに乗り切れないでいた。
車たちの間を縫うようにして進んでいるが、いかんせん車の数が多すぎる。
少し前に事故でもあったのか、検問なども実施されていたため、車の列に巻き込まれてしまう。
なんと間の悪い…
ちらりと道路脇に目をやったダエルは、ふとこんな質問を投げかけてきた。
「リーダー、まだまだ金あるんすよね?」
「こんなときに、なんだ?」
「この件が終わったら、同じ車買ってくださいよ」
叫ぶが早いか、ダエルはいきなりハンドルを切った。
道路脇の林に突っ込み、降りの勢いそのままに、木々の間を突き進む。
木にサイドミラーをぶつけても、悪道の揺れでライトが割れても、まるでお構いなし。
恭弥のスマホが鳴り、受信した。
「ワゴンのほかに、黒いセダンと貨物トラックに囲まれてしまいました」
それらの車にはスモークが施されているため、人数は把握できない、とのこと。
追突されないよう、護衛人の車でガードするよう、恭弥は指示を出した。
そうしている間にも、恭弥とダエルの車もようやく車道へと舞い戻る。
「こっからは、心置きなく飛ばせるっす」
恭弥の父を乗せた車は、前をゆくセダンに嫌がらせを受けていた。
いきなりスピードを下げられたり、抜かそうとしたら別のワゴンに邪魔されたり。
恭弥の父も、運転手も、異変が起こっていることに気づき始める。
いっぽう、護衛人たちは、戦闘の準備を始めていた。
市街地から少し離れた道路に入ったため、一般車の姿も見えない。
ガスガンと警棒を備え、戦いに向けて気持ちを引き締めた。
道路脇が木々に囲まれる場所を走っていると、恭弥の父を乗せた車が、いきなり横から体当たりを受けた。
その様子を見ている護衛人たちは、まずはワゴンに対応しようと移動する。
すると今度は、恭弥の父が乗った車に、後ろから白いトラックが迫ってきた。
その瞬間、前を走るセダンが速度を緩め、衝突!
後ろから来る白いトラックは、勢いを緩めず突進してくる。
護衛人がそれに気づき、ハンドルを切った。
恭弥の父を乗せた車と、トラックとの間に、自分たちが乗った車を滑り込ませる。
護衛人たちの車は、真横からトラックに追突され、そこでようやく動きは収まった。
しかしすぐさま、別の危機が訪れる。
ワゴンから男たちが出てきたのだ。
いっぽう、衝撃のため混乱していた恭弥の父は、頭を抑えていた。
衝撃を吸収するためのクッションが、窓を覆っている。
鉄パイプやナイフを持った強面の男たちが、恭弥の父が乗った車を囲む。
恭弥の父が乗っている車の窓を、鉄パイプでガンガン打ちつけた。
ようやく追いついてきた恭弥たち。
後ろからきた(恭弥たちの)車を見て、鉄パイプの動きも一瞬止まっていた。
車を降りた恭弥とダエルは、連中と対峙した。
歯を食いしばる恭弥は、ダエルに向けて言い放つ。
「オマエは一人も殺るな」
怒りに任せて突っ込む恭弥に、先頭の男がナイフを繰り出してくる。
軽く手をキャッチした恭弥は、相手の腕を捻るようにしてナイフを奪い、まずは手のひらにドスッ!
背中に回って、右腕に4度のドスッ!
「俺たちでやりあうならまだいい。家族にまで手ぇ出してんじゃねえ!」
叫ぶと同時に、恭弥のナイフ捌きが牙を剥く。
容赦なく、相手の腹をブシュウッとV字に切り裂いた。
横から殴りかかってきたバット男を、水平蹴りで対応。
こちらもすぐに、ナイフで3度、ドスッ!
残りの連中にも、恭弥は鋭い眼光で睨みすえる。
ダエルも横に立った。
互いに突進することで、2人VS多数のバトルが始まった。
その様子を、恭弥の父が車の中から見ていた。
「恭弥?」
若い女性が運転する車が、バトルの現場に接近していた。
やや離れた位置で違和感を感じた女性は、車を止めてスマホを構える。
映像に残すつもりらしい。

コメント