第82話

ラノックが電話で、シャフランは川崎にいることを告げてきた。

使われていない工場施設が一部放置されていて、そのどこかに潜んで療養しているという。

現在はラノックの部下が追跡しているため、そのうち良い知らせが入るだろう、とのこと。

ラノックは続ける。

「フランス情報総局からは、まだ職員が増員されていない。シャフランと戦うことになれば、今の要員だけでは手に負えないだろう」

そこでラノックは、恭弥に助力を頼んできた。

「もちろん力になります」と恭弥。

通話を終えた恭弥は、すぐに京極に電話を入れた。

「今から会えますか?」と。

京極が来るまで迎えに来てくれて、助手席に座った恭弥。

外国車のため、左ハンドルだ。

まずはダエルのいる学校に向かうことにする。

京極は、今訓練中の部下を連れて行く案を申し出てくれるが、恭弥は断った。

まだ実力が伴わない部下では、危険だからと。

「岩田さんくらいの実力がないと、むしろ足手まといです」

京極いわく、岩田は別案件に出ているため合流はできないとのこと。

つまり動けるのは、恭弥、ダエル、京極の3人だ。

「劉珉邦は任せてもいいんですよね?」と尋ねると、京極は少し刺々しい口調を発する。

「劉にやられた部下たちのナイフを持ってきた。それでやつの首を掻き切って、部下たちの墓に手向けてやる」

「そうしてやりましょう」と言ったあと、恭弥はちょっと心配を口にする。

「須賀先生はまだ、コンディションが万全じゃない(戦場の感覚は戻っていない)。社長だって、昔ほど動けるとは言い切れないでしょう」と。

京極もその点は認めた上で、今までにないくらい表情を怒らせて言い放った。

「それでも、首斬り屋は私の手で始末する」

それが叶うなら、私はどうなってもかまわない、とまで。

恭弥は心で思った。

社長を死なせはしませんよ。

運動部部室で、ダエルと合流した2人。

恭弥から、シャフランの居場所が分かったと告げると、ダエルの表情が怒りに満ち溢れた。

そして恭弥は、これまでの経緯をカンタンに伝えた。

神奈川県の川崎にいるが、まだ正確な場所までは掴めていない。

でももうすぐラノックから連絡が入るだろう、と。

「川崎に(フランスの)要員がいるらしい。オレら2人でやるぞ」

2人と聞いた京極は、自分が入ってないことを疑問に思い、尋ねてきた。

「劉珉邦は川崎にいませんからね」と恭弥は答える。

シャフランが追い詰められたら、劉珉邦に連絡がいくはず。

そして劉珉邦が動いたところを、京極が攻撃する、という算段だ。

京極は納得し、すぐに行動を起こすことにした。

車で移動中の3人。

京極が運転し、恭弥が助手席、ダエルが後部座席に座っている。

と、恭弥の電話に神代からの電話が入った。

新田宗次郎の息子の腕を折ったのかと聞かれ、恭弥は答える。

「ガキの腕を折りはした」

「てめぇもガキだろ」と神代。

神代いわく、新田宗次郎はわざと恭弥に息子を襲わせて、それをきっかけに神代の組を潰そうとしているそうだ。

やられたからやりかえす、という大義名分を作ったのだ。

「腕を折ったのはオレだ。なのになんでお前を?」と恭弥は尋ねる。

「いろいろあんだよ」と神代。「お前も狙われるだろうから、気をつけろ」

電話を終えると、京極は新田宗次郎について尋ねてきた。

一悶着あったと答えた恭弥に、京極は言う。

「新田宗次郎はかなり危険な相手だ」と。

「シャフランや劉珉邦より?」と尋ねた恭弥に、京極は続ける。

「真っ向から戦えば君の圧勝だろう。だが奴は、卑劣なことで有名だ。予想外の攻撃をされたら、君でも敵わない」

戒めを受けた恭弥は、素直に忠告を受け入れた。

戦いの前に、腹ごしらえに向かう3人。

適当に店を選んで、食事にありつく。

京極が食べようとすると、恭弥は表情を引き締めて自分の考えを述べ始めた。

ついさっき新田組と戦ったが、あまりにも弱すぎて手応えがなかった。

だけど、神代を潰すための大義名分作りだと判明した。

しかも、息子の腕まで犠牲にしている。

なにか腑に落ちない…

「同じように考えると、川崎の件も罠だと考えられませんか?」

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