第61話

ラノックから電話を受け取った恭弥。

なんでも、恭弥が持つ証券会社の口座に、ゴント社の株を移しておいたという。

今のところは5億円相当の価値があるが、今後はもっと上がる見込みだそうだ。

個人講座のほうにも送金されていたが、それは買収資金として受け取ってくれ、とのこと。

その額1億円。

「買収資金なら十分あるので、お返しします」と恭弥。

でもラノックは、運転資金として使ってくれ、と言うのだった。

恭弥は話題を変え、シャフランから連絡があったことを伝えた。

情報提供に感謝する、とラノック。

いつか一緒に食事をする約束をし、電話を終えた。

ダエルを運転手に、後部座席に座った恭弥。

高級車を高校生が運転しているのは変だろ、というのが恭弥の言い分だった。

でもダエルから見れば、そんなのはまだまだ序の口。

何しろ恭弥は、暴力団の頭や身辺警護会社の社長、グローバル企業の支社長やフランス大使とも知り合いなのだ。

そんな会話をしていると、恭弥のスマホに連絡が入った。

ミシェルからの連絡で、芸能事務所の買収の件で顔合わせが必要とのこと。

適当に返事して切ると、ダエルがこんなことを言ってきた。

「最近、ガキを殴りましたか? トロントスクエアでのことみたいっすけど」

ふと、恭弥は思い出した。

鬼塚と姫野が殴られてたから、助けに入ったことを。

「でも誰も殺してねえぞ」と言い訳する恭弥。

「ガキのケンカなら当たり前っす」とダエル。

ダエルが言うには、そのときやられた連中の父親が有名な暴力団の家系で、法に訴えたんだとか。

「何かと思えば」と恭弥は軽くあしらう。「今度シメあげて、訴えを取り下げさせてやるよ」

「ダメっすよ。法を武器にする奴が一番面倒なんすから。鬼塚と姫野に正当防衛だったと証言してもらえれば問題ないんすから」

ダエルが妙に平和主義な意見を言うもんだから、恭弥はちょっと腑に落ちない表情を浮かべる。

「シャフラン のこと以外は、なるべく穏便にいきましょう。良い世の中っすからね」

車の外を眺めた恭弥は、「確かに、良い世の中だ」とつぶやくのだった。

美紅から電話がきて、話し終えるとダエルがちょっかい出してきた。

「乙女心を弄ぶなんて。だからうちの娘をやれないんす」

適当に言い訳する恭弥。

待ち合わせ場所に着くと、恭弥が窓越しに声をかけ、美紅は助手席に座った。

美紅は、トロントスクエアで美味しいかき氷があるから、そこに行きたいと言い出す。

両親は帰りが遅いから、今日は心配されることもない、と。

ダエルの運転でトロントスクエアへ。

と思いきや、ダエルはなぜか方向転換して、学校へと到着した。

車を降りたダエルは、「今日まで送らなくちゃいけない重要な書類があった」と言い残し、鍵を置いて行ってしまった。

「二人で遊んでこい」と。

そんなわけで、恭弥の運転でドライブすることになる。

ため息をつきながら、車を発進させる恭弥。

隣に座る美紅は、心臓がドキドキしてしまうのだった。

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