脅しとも取れる薫からの連絡を受け、電話を終えた愛子はため息をもらした。
こんなことしたくないから、ミシェルさんとの仕事を選んだのに…
ミシェルさんに打ち明けるべき?
顔を手で覆いながら、愛子は思い悩むのだった。
風呂上がりの恭弥に、父が声をかけてきた。
団地の周りを歩きながら、ちょっと話をしよう、と。
ということで、外に出た2人。
街灯が光る夜の道を歩く。
恭弥は白いTシャツ姿、父は薄いブルーのYシャツを着ている。
ある程度歩いて立ち止まった父は、神妙な面持ちで尋ねてきた。
「恭弥、お前はDIの代表なのか?」
不意の質問に、恭弥はちょっと冷や汗を流す。
父はスマホを取り出し、恭弥に画面を見せた。
ホテルでの待遇が気になったため、いろいろ調べたらしい。
「ミシェルさんの名前で検索したら、こんな記事を見つけたんだ」
記事のタイトルは以下だ。
『DIファミリーが(株)クレディ・ベンチャーズから巨額の投資を誘致』
本文には、ミシェル理事の名とともに、『西恭弥代表』という名前もバッチリ書いてある。
さらに、椎名愛子主演のドラマに注力する予定だ、とも。
「これはお前なのか? それとも、同姓同名なだけか?」
一瞬言葉に詰まった恭弥だが、結局は打ち明けた。
「オレです」
そして、説明し始めた。
「ゴント社の件で知り合った人が、ドラマの投資先を探していたため、ミシェルを紹介したんです」
(ラノックの面影が描かれる。)
「その流れで、投資が終わるまで、代表になるよう頼まれました。一時的なことなので、話さなかったんです」
父は顎に手を当て、ちょっと息をついた。
「自分で成果を出したビジネスだ。報告の義務はないさ。ちょっと驚きはしたが」
「ひと段落したら話すつもりでした」
父はタバコを取り出し、口にあてがう。
火をつけ、煙を吐くと、「それだけか?」と聞いてきた。
「え?」と聞き返す恭弥に、「ほかに父さんたちが知らないことはないのか?」と父。
恭弥は心の中で、この先ちょっとずつ明らかになるより、この場で全部話したほうがいいだろう、と考えていた。
というわけで、まずは京極との関係について話した。
「UBコップという警護会社があるんですが、その会社の持分ももらえる予定です」
父は驚きの表情を浮かべたが、すぐに苦笑いに変わった。
ちょっと青ざめながら、「ハハハハハ」と声だけで笑った。
「それで終わりか?」
「ほかには、ゴントの株も少しあります」
「ゴントの? いくらくらいだ?」
「細かくは分かりませんが、数億円の価値だと聞きました」
父は顔中に汗を浮かべながら、またもや「ハハハ」と笑った。
話のついでにと、恭弥は自分の気持ちを伝える。
「その金は、父さんと母さんが管理してもらえますか? オレには必要ないし、使い道もないんで。児童養護施設の支援金にでも使ってください」
父はふっと息を吐き、「わかった」とつぶやいた。
恭弥を心配する父は、「その金は、卑怯な方法で手にしたわけじゃあるまいな?」と聞いてきた。
「運が良かっただけです」と、恭弥はまっすぐに父を見て答える。
「他にも理由はありますが、今は話せません。でも、卑怯な方法を使ったりなどしてません」
「信じるよ」と、父はまた息をついた。
少し表情を固くした父は、次の質問をぶつけてきた。
「前にも聞いたが…、恭弥、お前は本当に、父さんの息子か?」
この質問には、さすがの恭弥も一瞬固まってしまう。
「飛び降りて怪我する前から誠実な子だったが、あくまでも高校生レベルだった。しかし今のお前は、父さんの理解を超えるときがある」
そして父は、覚悟はできているから正直に答えて欲しい、と真っ直ぐな目を向けてきた。
恭弥は答える。
「誰が何を言おうと、オレは父さんの息子です」
しかし心の中では、葛藤が渦巻いていた。
自分の発言が本当なのか嘘なのか、判断しきれずに…
「まあ、財産の話を打ち明けてくれたのも、息子だからだよな。変なことを聞いてすまない。もう聞かないよ」
2人は歩きながら話し始めた。
父は、母さんには自分から話しておくと言い、母さんの名前で財団を作る案をもちかけるのだった。
ホテルのエントランスのような場所で、薫と大柴がテーブルを挟んで話している。
薫は大柴に、愛子はきっと今この場所に向かっている、と伝えた。
「お酒をたっぷり飲ませてからホテルへ…そして愛子はうちに引き入れ、美咲には助演をやらせましょう」
愛子の件が順調と見ると、大柴は次に、生意気なガイ(恭弥)について考え始めた。
ギャングの知り合いはたくさんいるという大柴に、なら痛めつけちゃえばいい、と薫。
「あいつも前に、ホテルで好き勝手にやってましたよ」
「ヤングだから、身のほどを知らないのさ。失うモノが多いのなら、手荒な真似はケアフルしないと」
「放っておくってことですか?」
薫の問いかけにに対し、大柴は不敵な笑みを浮かべるのだった。

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