第53話

木の枝に逆さに吊るされたダエルは、恭弥に対して「来ないでください」とつぶやいていた。

木の幹には、京極の部下のものが3人、ロープでくくりつけられている。

3人のうちの1人の靴には、発信器が内蔵されていた。

車で移動中の京極と恭弥。

運転する京極の横で、恭弥は眠り込んでいた。

その姿を見て、京極は驚く。

少し前まで激しい戦闘を繰り返していたのに、どうして眠れるんだろうと。

眠れば体力は回復するが、実際に眠れるかどうかは別問題だ。

このような緊急事態では、眠気が来る事などありえないからだ。

自分の安全が保障されているこの時間を無駄にしないこの感覚は、生まれ持った精神力だけでは不可能。

これまでに何度も、このような厳しい戦いを経験してきた証拠だ。

一体何者なんだ?

そのときスマホがなり、目覚めた恭弥。

神代からの連絡だった。

無事に先生の家族をホテルに送り届け、しっかりガードもつけてくれたそうだ。

倒した相手の処分も済ませたという。

恭弥は少し言葉に詰まり、そんな恭弥の心を察してか、神代は「言いたいことは大体わかる」とみなまで聞かなかった。

恭弥が京極と知り合いだったことにも触れた神代は、「お前ってヤツは」とつぶやいてから、5分後には加勢に行くと言ってくれた。

しかし恭弥は、その申し出は断る。

「そうかよ、勝手にしろ」と神代。

山に入ると、ダエルがいる少し手前で車を止めた。

敵にバレないためにだ。

「連中はまだこの山にいるでしょうか?」と京極に聞かれ、

「奴らは逃げる必要がありません」と拳を握る恭弥。「ターゲットは俺なんですから」

ただ問題は、この広い山のどこにいるかだ。

すると京極は、小型の受信機を取り出した。

任務遂行中の部下の靴の裏には、小型の発信をつけてあると。

約2キロ以内に入れば信号が受診されるという。

受信機の画面には、北東の方角に光がついていた。

「行きましょう」という京極に、恭弥は言う。

「社長はここにいてください。警察に知られないよう、口の堅い病院の手配もお願いします」

「生きて帰ってこれますか?」と京極。

「須賀先生を連れて、必ず」

京極は一瞬考えたが、結局は承諾して受信機を手渡してくれた。

契約金は倍にして返すので、部下も助けてくれるよう、恭弥に頼みながら。

行こうとした恭弥に、京極はナイフを差し出した。

京極が非武装地帯で使っていたナイフで、一種のお守りだと言う。

「どうして俺に?」と聞く恭弥。

「生きて必ず返しに来てもらうために」

その言葉を聞いた恭弥は、お礼を言って受け取るのだった。

受信機を頼りに歩みを進めていくと、ダエルたちが捕まっている木にたどり着いた。

逆さの状態になったダエルを見て、いくらダエルでも4時間以上この状態では命が危険だ、と感じる。

罠だったとしても、すぐに助けなければ!

ナイフを鞘から抜いて、木に近づく。

すると京極の部下が目を覚まして、来るなと言わんばかりに首を横に振った。

ダエルも目覚め、「リーダー」とつぶやく。

「家族は無事だ」と伝える恭弥。

そしてその表情を鬼のように怒らせた。

直後、足音を鳴らしながらやってきた無数の男たち。

その手にはバットや木刀などが握られている。

山本組だ!

左目のあたりに引っ掻き傷がある相手のボスは、「この時を待ちわびたぜ。ここがてめえらの墓場だ」と口にした。

部下の一人が、「絶対1人で来るって言ってたが、本当だったな」と言う。

それを聞いて、恭弥はやはり背後にシャフランがいる事を悟る。

「逃げてください」と、ダエルは弱々しく言う。「後で体制を整えてから」と。

でも恭弥は、「俺が誰だか忘れたのか?」と言いながら身構えた。

「この場で一人残らずぶっ潰せばいいだけの話だ」

引用:ピッコマ

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