第70話

シャフランから20億円を受け取るよう指示を受け、驚く恭弥。

ラノック自身が囮になり、敵を一掃しようという魂胆だ。

今まで数々の危険を掻い潜ってきただけに、ラノックは余裕の笑みさえ浮かべていた。

恭弥のほうも、2つほど頼みごとをする。

ゴント社に、西モータースの注文を優先してもらうこと。

シャフランの件で、恭弥が個人的に行動をとるのを認めること。

「お安い御用だ」とラノック。

その場で電話を入れ、車の件を解決してくれた。

そしてラノックは、さらに1つ個人的な頼みごとをしてきた。

一瞬だけ警戒した恭弥だが、ラノックからの頼みは他でもない、夕食の誘いだった。

食事前。

ミシェルに電話して、ドラマ制作の件について話す恭弥。

主役に関して、「薫じゃなくて愛子でいけ」と指示を出した。

制作発表の話も進める。

電話が済むと、テーブルの向かいにいるラノックに対して忠告を入れた。

このホテルには、危険な人物も紛れ込んでいる、と。

「君がいるから安心だ。これほど心強いことはないよ」とラノック。

デザートが運ばれてくるころ、ラノックに電話が入った。

車の件が順調に進んでいるとの報告だった。

タクシーで自宅に帰る途中、恭弥は何者かと連絡をとっていた。

帰宅すると、父母と一緒の時間を取る。

父いわく、ゴント社とのやりとりがスムーズに進んでいるらしい。

「お前のほうが事業に向いてるようだな」と父。

「自慢の息子だわ」と母。

恭弥は思う。

今日は胸糞悪いことばかりだったが、2人を見ていると気持ちが浄化されてゆく、と。

学校の放課後。

運動部の4人が、校庭で体操をしている。

やや離れたところで、恭弥とダエルが話していた。

話題は、ドラマ制作についてだ。

懸垂をしながら、ダエルは言う。

「その女(薫)、テレビではニコニコ笑顔振りまいてるくせに…外見に騙されるなってことっすね」

「呑気にテレビ見てるなんて、お前もすっかりおっさんだな」と恭弥。

「妻と娘の会話についてくためっすよ」

そんな他愛ない会話のあと、恭弥は本格的なトレーニングを再開することを示唆した。

「久々に新兵を受け入れることにしたからな」と恭弥。

説明を求めるダエル。

そのとき、黒い車から京極が降りてきた。

部下を5人ほど引き連れている。

実は恭弥は、昨晩帰宅するタクシーの中で、京極に連絡を入れていたのだ。

恭弥が講師を務める気になったのかと思い、喜ぶ京極。

そうではないが、トレーニングの相手役として使える人材をよこしてほしい、というのが恭弥の願いだった。

京極にしても、願ったり叶ったり。

ってことで、京極が部下を引き連れて学校にやってきたのだった。

京極は部下に対し、恭弥とダエルに挨拶するよう命じた。

「格闘術を教えてくれる、西教官と須賀教官だ。挨拶しろ」

5人はちょっと頭を下げたが、どうも恭弥やダエルをなめている様子。

眼光も鋭く、表情も厳しい。

それを見た恭弥は、いい目つきしてるな、と思いながら、ダエルにそっと耳打ちした。

「いきがってる新兵をどうやって教育するか、覚えてるか?」

ダエルは相手を睨み返し、不適な笑みを浮かべてつぶやいた。

「もちろんっす」

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