第46話

ホテルに駆けつけた恭弥は、さっそくシャフランについて知りたがった。

ラノックが言うには、シャフランは今日本にいて、どうやら中国が裏切った可能性があるとのこと。

生きているのは間違いないんですか、と恭弥は尋ねる。

自分の手で脇腹をかっさばいただけに、あの状態でシャフランが命を繋ぎ止めることは不可能だと思っていた。

仮に近くに医者がいたとしても、だ。

ラノックが言うには、シャフランがフランスにかけた電話を情報局が傍受し、そいつが「砂漠の氷」というコードネームを使ったため、シャフランだと判断したそうだ。

「砂漠の氷」とは、傭兵時代のシャフランのコードネームなのである。

恭弥は内心で、自分やダエルも別の体で生き返ったのだから…と思っていた。

また、シャフランの通話内容には「殺すべき相手が日本にいる」との言葉があった。

恐らく自分の事だと思った恭弥は、ギリっと歯を食いしばった。

ラノックはすでに手を回し、シャフランがどこにいるのか、背後に誰がいるのか、目的はなんなのかを調べているという。

大統領選にも関係している可能性がある、と。

さらにラノックは、シャフランの狙いが君なら助かる、との言葉も口にした。

囮になれと言う意味か? と思って恭弥は表情を鋭くした。

ラノックは、選択肢は2つあると言い出した。

1つは、恭弥を消すこと。

ただ、この問題はもはや、恭弥を消して終わる問題ではない。

恭弥は手を握り締め、やれるものならやってみてください、とラノックを睨みつけた。

ラノックは笑って2つ目の選択肢を述べた。

恭弥とラノックが手を組んで、シャフランを捕らえることだと。

ラノック本人も、後者を望んでいた。

しかしラノックはフランス人だけに、日本ではあまり派手な動きは取れない。

だからこそ恭弥のサポートに専念する、という。

法人を作って、費用面を負担する、と。

恭弥が考える間、ラノックはさらに続けた。

「君の個人的な恨みを晴らすだけの問題ではなくなっている。シャフランのバックに中国がいるのなら、君だけじゃ何も守れない。家族も友人も、君自身さえも」

少し考えさせてください、と言って恭弥が帰ろうとすると、ラノックはフランス国籍の取得を勧めてきた。

一緒に働ければ嬉しい、と。

でも恭弥は、日本が下に見られているようで気に入らない、と言って遠慮した。
ホテルを出てタクシーに乗った恭弥は、運転手に適当に走らせるよう指示した。

でも途中でトロンスクエアに目的地を決め、そう告げた。

反対方向だったため運転手は文句を言ってきたが、Uターンしてそちらに向かった。

人通りが多い街中を歩く恭弥。

シャフランが生きているなら、脅迫メッセージもシャフラン絡みの可能性が高い。

もしそうなら、山本組の比じゃないくらい厄介だ。

恭弥は、シャフランの処置を中国人に任せたことを悔やんだ。

自分で後始末をするべきだったのだ、と。

ラノックは恭弥を利用しようとしているが、恭弥にしてみればフランスの事などどうでもよかった。

とにかくシャフランの息の根を確実に止めて、ラノックの力を借りて背後にいる者も完全に潰す。

夏休みの間に全部やりきることを、心に誓うのだった。

そのときふと、人を殴る音が聞こえてきた。

ケンカか? と思ったが、どうやら違う。

音からすると、一方的な暴行だ。

何気なく、恭弥はそちらの方へ足を向けた。

路地裏でやられていたのは、鬼塚と姫野だった。

4人の男子が鬼塚を、2人の女子高生が姫野を殴っている。

オマエらがイジメてた相手はそれ以上に辛かったはずだ、と思いながら、背を向ける恭弥。

しかし、リーダー格の男子がうずくまる2人に尿を浴びせたのを見ると、さすがに黙っていられなくなった。

連中の前に姿を現し、睨みつけながら、「一度だけ言う、全員今すぐ失せろ」と命じた。

しかしいじめっ子たちが失せるはずもなく、その態度を見た恭弥は相手の1人に膝蹴りを見舞った。

あっというまに4人の男子を倒し、リーダーを見下ろす恭弥。

相手の目を見ると、憎しみに満ちた目にはまだ反発心が残っていた。

シャフランの件で後始末の重要性を学んだ恭弥は、相手の心を完全に折る事を決意する。

恭弥はリーダーの右手を踏み潰し、さらに顔面が潰れるほど拳を加え続けた。

相手が頭を地面に擦り付けて「許してください」と懇願してくるまで、ひたすらに。

ようやく立ち上がった恭弥は、後ろで見ていた残りのいじめっ子に、リーダーを連れて帰るよう命じるのだった。

引用:ピッコマ

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