第98話

「ケアフルすればノープロブレムってことだよ」と大柴は口元を緩めた。

「そういう意味だったんですね」と薫。

「でもあのガキはかなり凶暴なので、気をつけたほうがいいですよ」

「ハイスクールじゃ不良のリーダーってとこだろう。ミーのブラザーは本物のギャングだ」

大柴のスマホが鳴り、局長から到着したとの連絡が入った。

愛子はまだ局長の元に来ていないらしい。

「(愛子は)カミングスーンじゃなかったのか?」と、電話を終えた大柴は薫に尋ねた。

「絶対来ますよ。あの子、私に逆らう度胸なんてないですから」

自宅で着替え中のミシェル。

白いキャミソールに、紺色のスカート姿だ。

スマホが鳴り、ベッドに腰掛けて受信する。

「愛子」と相手の名前を読んだ後、表情が一変した。

自室のベッドに横になる恭弥は、父に話せて気が楽になったと感じていた。

スマホが鳴り、受信する。

「愛子から連絡があったの」

そう切り出したミシェルは、相談された内容を打ち明けてゆく。

薫から連絡を受けた愛子が、お酒の席に呼ばれたこと。

練習生の美咲も一緒に連れてくるよう言われたこと。

「DIを救うにはそれしかないって言われたそうよ」

「2人とも行ったのか?」と恭弥。

「ううん、悩んで私に連絡してきたみたい」

「お前はどう思う? 2人が行かないとヤバイのか?」

「(会社が)潰れることはないだろうけど、経営が厳しくなるのは確かよ」

「だからって2人を行かせるってのか?」

「そうじゃなくて…」

やや困惑の表情を浮かべていたミシェルだが、表情を引き締めてこう続けた。

「大変なことになるから、ボスにも覚悟してもらうために連絡したの。汚い真似するためにこの仕事はじめたわけじゃないでしょ」

恭弥もキリッとした表情で答えた。

「ああ、それでこそミシェルだ」

「DIのことは心配すんな。俺が潰させねえ」

スマホをハンズフリーにした恭弥は、愛子と美咲を連れて今すぐ事務所に来るようにと伝えた。

着替えながら、表情を厳しくして覇気をみなぎらせる。

「それから、デイビッドとかいうクソ野郎の連絡先を調べといてくれ」

事務所についた恭弥を、ミシェル、愛子、美咲の3人が出迎える。

恭弥はすぐに、ミシェルからデイビッドの連絡先を聞き、さっそくスマホで電話をかけた。

つながると、こちらの言い分だけ伝えてゆく。

「要件だけ言う。今から1時間後、アリオンにオマエをぶっ潰しに行く。1時間で準備しておけ。金・人脈・力、総動員してオレを止めてみろ」

相手の言葉など一切聞かずに電話を切ると、恭弥は3人に、一緒に来るよう伝えた。

「一緒に戦えってんじゃない。ただ見てろ」

さらに恭弥は愛子に対してこう伝えた。

「ミシェルに連絡したのは正解だ。その勇気がどんな結果につながるか、自分の目で確認しろ」

感激した愛子は俯き、涙を流した。

一歩目を踏み出した恭弥は、勇ましく言い放つ。

「しっかり見せてやるよ。オマエらが怖がってる権力や金や暴力が、どんなにくだらねえものなのかってことをな」

ミシェルは、別のことを心配していた。

「でもアリオンが警察に通報したらどうするの?」

「心配ねえ」と恭弥は言った。
大柴は、額に血管を浮かべて憤っていた。

「警察に連絡して何になる? あのガキにワーニングして終わるだけだ」

宣戦布告されたことを侮辱と感じ、すぐさま行動を起こした。

スマホで社内にいる者に撤退するよう命じ、防犯カメラもオフ、これからここでフィジカルファイトがあることも伝えた。

「信じていいんですよね」と、薫は大柴のグラスにお酒を注いだ。

「ドントウォーリー。プロファイターでも敵わない本物のギャングを揃えてやる」

「私も見に行っていいですか? アイツの泣き顔を見たいんです」

期待に胸を膨らませる薫に、「オフコース」と大柴は笑って答えた。

ギャングたちが、続々とアリオンに集結する。

地下の駐車場には、黒い車が並んでいく。

いっぽうの恭弥は、別の駐車場に車を停め、3人の気持ちを確認した。

「怖いなら、ここで待ってるといい」

でも3人とも、ついてくると言葉にした。

美咲だけは勘違いしているようで、恭弥が相手を説得し、謝罪させるつもりなのだと思っているようだった。

これから激しいバトルがあるとは、夢にも思っていないのだ。

美咲の勘違いを知った恭弥は、どっちにしても謝罪させるつもりなのだからと、特に何も言わなかった。

建物に向かう途中、立ち止まった恭弥は、3人に背中を向けたままこう言った。

「何があってもオレの後ろにいろ。オマエらの安全は保証する」

いざ、アリオンの玄関に達し、自動ドアを通り抜ける。

中は電気が落としてあり、暗闇になっていた。

恭弥を先陣にして、3人の女性はびくつきながらついてきた。

暗がりの奥に、ソファに座る大柴と薫の姿があった。

「仲間はどうした?」と大柴。

「これで全部だ」と恭弥が言う。

「ユーのほかにレディが3人? 少なすぎるんじゃないか?」

「こっちのセリフだ」

恭弥がそう言うなり、室内の電気がつけられた。

大柴と恭弥との間に、すでに何人ものギャングが立ちはだかっている。

恭弥は臆するどころか、余裕の表情で言う。

「たったそれだけでオレに勝てると思ってんのか?」

コメント

error: Content is protected !!
タイトルとURLをコピーしました