「ケアフルすればノープロブレムってことだよ」と大柴は口元を緩めた。
「そういう意味だったんですね」と薫。
「でもあのガキはかなり凶暴なので、気をつけたほうがいいですよ」
「ハイスクールじゃ不良のリーダーってとこだろう。ミーのブラザーは本物のギャングだ」
大柴のスマホが鳴り、局長から到着したとの連絡が入った。
愛子はまだ局長の元に来ていないらしい。
「(愛子は)カミングスーンじゃなかったのか?」と、電話を終えた大柴は薫に尋ねた。
「絶対来ますよ。あの子、私に逆らう度胸なんてないですから」
自宅で着替え中のミシェル。
白いキャミソールに、紺色のスカート姿だ。
スマホが鳴り、ベッドに腰掛けて受信する。
「愛子」と相手の名前を読んだ後、表情が一変した。
自室のベッドに横になる恭弥は、父に話せて気が楽になったと感じていた。
スマホが鳴り、受信する。
「愛子から連絡があったの」
そう切り出したミシェルは、相談された内容を打ち明けてゆく。
薫から連絡を受けた愛子が、お酒の席に呼ばれたこと。
練習生の美咲も一緒に連れてくるよう言われたこと。
「DIを救うにはそれしかないって言われたそうよ」
「2人とも行ったのか?」と恭弥。
「ううん、悩んで私に連絡してきたみたい」
「お前はどう思う? 2人が行かないとヤバイのか?」
「(会社が)潰れることはないだろうけど、経営が厳しくなるのは確かよ」
「だからって2人を行かせるってのか?」
「そうじゃなくて…」
やや困惑の表情を浮かべていたミシェルだが、表情を引き締めてこう続けた。
「大変なことになるから、ボスにも覚悟してもらうために連絡したの。汚い真似するためにこの仕事はじめたわけじゃないでしょ」
恭弥もキリッとした表情で答えた。
「ああ、それでこそミシェルだ」
「DIのことは心配すんな。俺が潰させねえ」
スマホをハンズフリーにした恭弥は、愛子と美咲を連れて今すぐ事務所に来るようにと伝えた。
着替えながら、表情を厳しくして覇気をみなぎらせる。
「それから、デイビッドとかいうクソ野郎の連絡先を調べといてくれ」
事務所についた恭弥を、ミシェル、愛子、美咲の3人が出迎える。
恭弥はすぐに、ミシェルからデイビッドの連絡先を聞き、さっそくスマホで電話をかけた。
つながると、こちらの言い分だけ伝えてゆく。
「要件だけ言う。今から1時間後、アリオンにオマエをぶっ潰しに行く。1時間で準備しておけ。金・人脈・力、総動員してオレを止めてみろ」
相手の言葉など一切聞かずに電話を切ると、恭弥は3人に、一緒に来るよう伝えた。
「一緒に戦えってんじゃない。ただ見てろ」
さらに恭弥は愛子に対してこう伝えた。
「ミシェルに連絡したのは正解だ。その勇気がどんな結果につながるか、自分の目で確認しろ」
感激した愛子は俯き、涙を流した。
一歩目を踏み出した恭弥は、勇ましく言い放つ。
「しっかり見せてやるよ。オマエらが怖がってる権力や金や暴力が、どんなにくだらねえものなのかってことをな」
ミシェルは、別のことを心配していた。
「でもアリオンが警察に通報したらどうするの?」
「心配ねえ」と恭弥は言った。
大柴は、額に血管を浮かべて憤っていた。
「警察に連絡して何になる? あのガキにワーニングして終わるだけだ」
宣戦布告されたことを侮辱と感じ、すぐさま行動を起こした。
スマホで社内にいる者に撤退するよう命じ、防犯カメラもオフ、これからここでフィジカルファイトがあることも伝えた。
「信じていいんですよね」と、薫は大柴のグラスにお酒を注いだ。
「ドントウォーリー。プロファイターでも敵わない本物のギャングを揃えてやる」
「私も見に行っていいですか? アイツの泣き顔を見たいんです」
期待に胸を膨らませる薫に、「オフコース」と大柴は笑って答えた。
ギャングたちが、続々とアリオンに集結する。
地下の駐車場には、黒い車が並んでいく。
いっぽうの恭弥は、別の駐車場に車を停め、3人の気持ちを確認した。
「怖いなら、ここで待ってるといい」
でも3人とも、ついてくると言葉にした。
美咲だけは勘違いしているようで、恭弥が相手を説得し、謝罪させるつもりなのだと思っているようだった。
これから激しいバトルがあるとは、夢にも思っていないのだ。
美咲の勘違いを知った恭弥は、どっちにしても謝罪させるつもりなのだからと、特に何も言わなかった。
建物に向かう途中、立ち止まった恭弥は、3人に背中を向けたままこう言った。
「何があってもオレの後ろにいろ。オマエらの安全は保証する」
いざ、アリオンの玄関に達し、自動ドアを通り抜ける。
中は電気が落としてあり、暗闇になっていた。
恭弥を先陣にして、3人の女性はびくつきながらついてきた。
暗がりの奥に、ソファに座る大柴と薫の姿があった。
「仲間はどうした?」と大柴。
「これで全部だ」と恭弥が言う。
「ユーのほかにレディが3人? 少なすぎるんじゃないか?」
「こっちのセリフだ」
恭弥がそう言うなり、室内の電気がつけられた。
大柴と恭弥との間に、すでに何人ものギャングが立ちはだかっている。
恭弥は臆するどころか、余裕の表情で言う。
「たったそれだけでオレに勝てると思ってんのか?」

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