第105話

口髭男が銃を打つ瞬間、恭弥はさっと相手の懐に飛び込んだ。

左手で相手の右手首を持ち上げ、軌道をそらす。

発砲した衝撃と、恭弥の圧力により、口髭男は銃を落とした。

至近距離から右ストレートを見舞おうとするが、もう1人(ツーブロック男)が横から発砲。

そちらにも気を配っていた恭弥は、身をかがめて弾丸をかわす。

すぐさま体を反転させ、もう一度発砲してきたツーブロック男の懐に飛び込む。

相手の顎に、下から掌底打ちを加えた。

しかしツーブロック男は怯まず、左フックを繰り出してくる。

後ろからは、口髭男の踵落としが!

まるで背中にも目があるように、恭弥はその蹴りを屈んで避けた。

ツーブロック男が銃を構え、連続で発砲。

いったんしゃがみ込んだ勢いをつけて、恭弥は下からツーブロック男の腕を持ち上げる。

そのままツーブロック男を壁に押し付け、右の膝蹴り。

ツーブロック男はそれを、左腕でガードした。

恭弥の背中から、口髭男が前蹴りを繰り出してくる。

ツーブロック男から離れることで、恭弥はその蹴りを避けた。

ツーブロック男が発砲してくるのを、口髭男のほうに回り込んで避ける。

口髭男が、恭弥とツーブロックの間にいる形になった。

一瞬だけ銃が恭弥の視覚になった機を逃さず、ツーブロック男はしっかりと恭弥に狙いを定める。

トリガーにかかったツーブロック男の指に、力がこもる。

目を鋭くした恭弥は、低い姿勢で口髭男に突進し、その勢いでツーブロック男の銃をそらした。

右手で、口髭男の背後にいるツーブロック男の銃身を掴みつつ、口髭男の膝蹴りを左手でガード。

2人組の強さをまざまざと感じた恭弥は、こう思った。

こいつら、只者じゃねえ!

低い姿勢でいる恭弥の背中に、口髭男は右のエルボーを繰り出してきた。

お返しとばかりに、恭弥は依然として右手でツーブロック男の銃を掴んだまま、左エルボーを口髭男の顎に見舞った。

いったん右手を離すと、ツーブロック男はすぐさま恭弥の胴体目掛けて発砲してきた。

さっと左に避けつつ、口髭男を盾にする格好でツーブロック男の視界から逃れる。

このままじゃ、こっちが不利だ…

そう思った瞬間、エレベータの扉が開いた。

扉の向こうにいた2人の男が、エレベーター内のバトルに気付き、すぐさま参戦する。

1人が、「ムッシュ西を援護するんだ」とフランス語で叫んだ。

味方が来たことで、恭弥はツーブロックに集中する。

相手が発砲する瞬間に接近して腕を掴み、弾丸の軌道を逸らす。

まずは右手の膝蹴りを放って、銃を手放させた。

右の拳を、相手の左頬にクリーンヒットさせたが、相手は怯まずファイティングポーズを取った。

しかし!

1対1の戦いで、銃もない状態では、恭弥のほうが圧倒的に強かった。

左右の拳を素早く繰り出し、相手を防戦一方にする。

左のアッパーを相手の顎にクリーンヒットさせ、さらに頭突きを鼻っ面にくれてやった。

勢いよく鼻血を吹き出したツーブロックは、ついにその場に倒れた。

すぐさま口髭男の様子に気を配ると…

さっき乱入してきた2人の味方が、口髭男にやられているではないか。

1人は自分の喉を抑えて床にかがみ込み、もう1人は口髭男のスリーパーホールドを食らっていた。

たった1人に、なにやられてんだ…

と思いながら、救援に向かう恭弥。

最初は相手の勢いに押されたが、すぐさま応戦し、お互い右拳を相手の頬にヒットさせた。

お互いに息を乱しながら、一瞬だけ離れて構える。

口髭男は、床に落ちていた銃に目をやり、掴もうとして身を低くした。

相手の右手が銃に届く寸前に、恭弥は右足で踏みつける!

そのまま、低い位置にあった相手の頬に、右の膝蹴り!

足元にある銃を掴んで、一発だけパシュッ!

弾丸が、口髭男の脳天を突き抜ける!

すぐさま2人の味方に、もう1人を捕獲するよう指示を出した。

しかし…

2人が調べると、ツーブロックはすでに昇天していた。

「トドメはさしてないぞ」と恭弥。

「毒を飲んだようです」

それを聞いて、恭弥は思った。

任務に失敗したスパイが、秘密保持のために自決するケースがあると。

恭弥はすぐに、黒川に電話した。

エレベーターで、スパイ2名を倒したことを告げる。

「処理をお願いできますか?」

黒川は承諾し、恭弥の無事を確認して通話を終えた。

ラノックがいる部屋へ向かい、ソファに腰掛けて対峙した。

恭弥とラノックの他に、人はいない。

ラノックはすでに、直前にあった騒動を聞きつけていて、お礼を言ってきた。

恭弥はさっそく、頼み事から切り出した。

「大使を説得するよう、国から要請があって…」

「鉄道のことかな?」と、ラノックは先回りして言った。

「はい。この国まで繋げてほしいと」

「その前に、私からも聞きたいことがある」と、ラノックは厳しい表情を浮かべた。

「君はいったい、何者なんだ?」

質問の意図を読み解こうとする恭弥に、ラノックは言葉を加える。

「うちの要員が2人がかりでも倒せない相手を、君は1人で倒した」

見てたのか?

ラノックは硬い表情のまま、質問を変えてきた。

「奴らの狙いが私だと、どうして分かったんだ?」

なるほど、オレを疑ってんのか…

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