恭弥は、現在に至るまでの過程を思い出していた。
軍人としてアフリカの密林を進軍中、仲間が何者かによって仕留められたこと。
『ゴッド オブ ブラックフィールド』と異名を付けられるくらいの功績を残した、フランス傭兵部隊の区隊長だったこと。
2016年7月、仲間から裏切られてしまい、背後から撃たれて戦死してしまったこと。
だがオレは、なぜか再び目覚めた
同姓同名の平凡な高校生、西恭弥に転生したのだ
高校生の西恭弥はいじめられっ子で、鬼塚を筆頭にした不良グループに呼び出される日々を送っていた。
しかし生まれ変わった恭弥は強く、鬼塚、姫野を軽く懲らしめた。
そして、白石美紅という女子高生との出会い。
校門の前で4人のヤクザに囲まれた恭弥は、美紅が見ている前で、連中をノックアウトしてみせた。
生まれ変わったのは、俺だけじゃなかった
戦場で共に戦った戦友『ダエル』も、『須賀実』という体育教師に転生していた
オレたち生まれ変わった人生に感謝し、平凡に生きくことを誓い合った
ところが!
裏切り者のシャフランが現れ、再び戦いの場に駆り出されることとなった。
恭弥は、シャフランとの壮絶なナイフ・デスマッチを思い出した。
勝利したのも束の間、今度はダエルが誘拐され、山の中で無数の暴力団と戦うことになった。
最初は1人で戦い続けたが、ダエルたちの救助に成功し、京極の助けもあって、7名で暴力団に対峙した。
その後、フランス大使の『ラノック』が登場。
首斬り屋との戦いが始まった。
頭脳戦、肉弾戦を繰り広げた挙句、ようやく勝利をつかむことができた。
酸素吸入器をつけてベッドに横たわるシャフランを、ダエルやラノックとともに確認したのだ。
あれからラノックたちは姿をくらまし、シャフランはフランス情報局に検挙されて本国へ強制送還されていった。
罪の重さからして、刑務所暮らしになるはずだ。
戦場での復讐を果たし、命を脅かされる心配もない
平凡に生きて、幸せを暮らそう
オレにだってその資格はあるんだから
ベンチプレスに励む恭弥は、ひと段落したタイミングで口走った。
「きちーな」
ぬっと上から覗き込むように顔を出したダエルは、「あと2セットあるっすよ」と発破をかけてきた。
5分の休憩の間、恭弥は水を飲みながら、部室内の光景を眺めた。
鬼塚や姫野などの不良たちも入部したらしく、器具で体を鍛えたり、ランニングマシンで走ったりしている。
「こいつら、いつまでもつっすかね?」とダエルが聞いてきた。
「姫野は最後までもつだろうな。体力面は他の部員と大差ねえが、根性だけはあるからな」
「確かに」とダエルも納得していた。
みんなで外をランニングしたときも、姫野だけは倒れるまで走っていたのだ。
鬼塚がひと段落したのを見て、恭弥は軽く声をかけて呼び出した。
「何か用か?」と尋ねてくる鬼塚。
「前にボコった新田とかいう奴の上に、まだ誰かいるんだよな?」
鬼塚はちょっと、気まずそうな表情を浮かべた。
ダエル(須賀先生)がいるから、話しにくいのだ。
「先生のことなら気にするな」と恭弥に言われ、話そうとすると、話を聞いていたらしい姫野がしゃしゃり出てきた。
「広瀬っていう大学生が、グループのリーダーしてるの」
姫野と鬼塚が言うには、(新田の)バックにいた暴力団がつぶれて、残った組員が広瀬を中心に集まったとのこと。
そんなわけで、広瀬の影響力が強くなったらしい。
「んじゃ、その広瀬ってのを潰せばいいんだな?」
「まあ、そうだけど」と鬼塚の口調には歯切れがない。
姫野が、その理由を語った。
「その先輩は、全国でも有名な総合格闘技部に所属してるの。有段者ばかりで、アマチュア大会の入賞者もいるのよ」
「怖いねえ」と、恭弥はあっけらかんとしたものだ。
鬼塚と姫野が運動に戻ると、ダエルがにんまりと話しかけてきた。
今度の相手は、ギャングでもなけりゃ暗殺者でもない。
テロリストでもなけりゃ、特殊部隊員でもない。
ただちょっと黒帯を絞めただけの、大学生だ。
簡単に勝てそうな相手だけに、2人はさっさと話題を変えた。
「近いうちに地鶏鍋食いに行きましょ」
「広瀬とかいう大学生も連れてって、何発かゲンコツ見舞ってから言い聞かせりゃ、更生するかもな」
そんな取り留めもない会話をしていると、後輩の女子部員『根本』が血相変えて扉を開け、報告してきた。
「大変です、グラウンドで…」

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