駐車場に車を停め、恭弥と黒川が立派な建物へと向かう。
入り口にいたスーツ姿の2人に呼び止められ、恭弥について軽く尋ねられた。
「あの方のお客さまだ」と黒川。
スーツの2人は頭を下げ、黒川と恭弥は建物に入った。
花の絵が飾られた展示室を抜け、黒川が扉をノックする。
中にいたのは、2人の男。
1人は椅子に座り、もう1人は座った男の横に立っていた。
「西さんですね?」と言いながら、座っていた男は立ち上がった。
ワイシャツにネクタイのフォーマルな姿で、髪は淡いグレー、年齢はラノックと同年代だろう。
優美な動きで表情もにこやかなのだが、なぜか恭弥は、その男からなんともいえない威圧感を感じていた。
恭弥の前まで歩み寄ってきたその男は、「原田正信です」と握手を求めてきた。
その名を聞き、恭弥はピンとくる。
と同時に、黒川が口を開いた。
「官房長官です」
恭弥と黒川が並んで座り、原田と向き合って話し始めた。
テーブルには、側近の男が用意したお茶がある。
原田はまず、国とラノックとの架け橋になってくれたことに対して、恭弥への感謝を口にした。
「他になにか、必要なことはないですか? 私も支援できればと思っています」
「これといって…」
恭弥は遠慮したが、原田はその言葉を遮り、側近に命じた。
側近が恭弥に差し出したのは、一枚の名刺(カード)だった。
「西さん専用の番号です。行政面で必要なことは、いつでも対応します」と原田。
恭弥がお礼を言うと、原田はにこやかに微笑んだ。
そのあと原田は恭弥に、ラノックとの会話について尋ねてきた。
「オレをこの国のホットラインにするそうです」
「おおっ」
目を見開き、驚く原田。
さらに原田は、ラノックがホットラインに対して呼ぶある言葉についても尋ねてきた。
「友、ですか?」
「素晴らしい。想像以上です」と喜びながら、原田はぐっと手を握りしめた。
「それに、この国まで鉄道を繋げるそうです」
正式決定ではないが、と恭弥は付け加えたが、原田は嬉しさのあまりパチパチと拍手した。
つられるように、側近も拍手する。
「歴史的快挙です」と、快活に笑う原田。
恭弥は冷静に、「まだ正式に決まったわけでは…」とさっきの言葉を繰り返した。
しかし原田は気にせず、「ラノック大使は、やると言ったらやる男です」と明るい調子で言った。
原田は黒川に、最近恭弥が見舞われたトラブルをきちんと処理したかと尋ねた。
アリオンの件だ。
黒川いわく、すでにアリオンには税務調査が入り、汚職疑惑についても調査が進んでいるとのこと。
背後にいた後藤組幹部も検挙し、取り調べ中である、とも。
「西さんの一言で、どんな処分もくだせます」と黒川。
そのあと原田は、恭弥の両親について尋ねてきた。
「お父様は西モータースの代表なんですよね。お母様は?」
「児童養護施設を支援する準備をしています」
これについても、原田は側近にサポートするよう命じた。
そんな会話の後、恭弥のほうからも1つお願いを口にした。
「大使はゴルフが趣味らしいのですが、警護が難しいようで諦めたとか…。なので、ゴルフを楽しめるよう手配していただけませんでしょうか?」

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