グラウンドには、ジャージを着た運動部員が7名いた。
メガネ男子の門倉が鼻血を流し、それを心配そうに見守る部員たち。
1名(馬場)だけ、ちょっと距離を置いたところから見ていた。
やってきた恭弥に、部員たちは「ちょっと手合わせ中に…」と説明する。
「手合わせ中の怪我ならよくあるだろ」と恭弥。
根本が詳しく説明しようとしたが、恭弥はそれを遮って、馬場という部員に目をつけた。
「馬場、なんでそんなツラしてる? 手合わせ中に怪我させちまっただけなんだろ」
恭弥がずいっと接近すると、馬場はビクッとなって後ずさった。
馬場は観念し、正直に打ち明ける。
「実は、手合わせが終わってから、あのメガネ…門倉を殴ったんです」
「タイマーの音でも聞き逃したのか?」と恭弥は迫る。
馬場は表情を歪め、冷や汗を流しながら答えた。
「思い通りいかずに、イライラしてつい」
馬場の心中を見抜いた恭弥は、すかさず言語化する。
「最近までイジメてた奴にやられたのが許せなくて、鼻血が出るまでボコったってことだな?」
「いや…」
恭弥に迫られ、馬場はついに観念した。
「その通りです」
みんなが黙って聞いている中、恭弥は馬場を追い詰める。
「力がものを言う世界じゃ怖くて生きていけず、ルールを守る世界でもそれか?」
「すみま…」
「謝らなくていい、失せろ」
さらに恭弥は、鬼塚と姫野に対しても厳しい目を向けて言い放つ。
「オマエらももう来なくていい。頑張ってるヤツらの邪魔すんな」
「私たちは何も…」
姫野や鬼塚が言い返そうとしても、恭弥に「黙って失せろ」と言われればそれまでだ。
「悔しいか?」と恭弥は続ける。
「コイツらはもっと悔しい思いをしてきたんだ。オマエらのせいでな」
姫野は震えながら、「謝ったじゃん」と口にした。
「謝ったら何もかもチャラになるのか?」と恭弥。
そして姫野の耳元に口を近づけ、きっぱりと言い放つ。
「なら、俺も謝るよ。すまないが、失せてくれ」
そのまま部員たちを置き去りにして、すたすたと部室に戻っていった。
姫野は悔しさのあまり、震えながら涙を流す。
「なんで、私が」
部室に戻った恭弥に、ダエルが話しかけていた。
室内には他に部員の姿はない。
「ちょっとやりすぎじゃないすか?」
「暴力振るったんだ。あのくらいで丁度いい」
「姫野はもったいないっすよ。根性あるって、リーダーも言ってたじゃないすか」
「それなら別んとこでもやってけるだろ」
ダエルはなおも説得を試みたが、恭弥は考えを変えるつもりがないようだった。
この話題は終えて恭弥が再びベンチプレスをやろうとすると、門倉と根本がやってきた。
2人がちょっと気まずそうな表情を浮かべているのを見て、恭弥は表情を厳しくする。
「アイツら、まだ文句言ってんのか?」
すぐに飛び出して一発かませようとする恭弥を、「違います」と根本が慌てて止めに入る。
そして、気持ちを話し始めた。
「馬場くんは間違ったことをしたと思いますが、仲良くなれそうな気もしてたんです。だから今回の件で追い出すのは…」
「馬場にそう言えって頼まれたのか?」
「違います」と、門倉&根本は首を振る。
根本が言うには、せっかく友達になれそうだったのに…とのこと。
できれば許してあげてほしいという根本に対し、恭弥は門倉の意見を求めた。
「オマエはアイツらを、許したいのか?」
門倉は弱々しく、「先輩さえよければ」と俯いた。
「オマエの気持ちを言え。許すかどうかを決めるのは、オレではなくオマエだからな」
恭弥が改めて聞くと、今度の門倉ははっきりと口にした。
「はい、許したいです」
恭弥は微笑み、それならさっきの話はなしにすると宣言した。
ほっと安堵の表情を浮かべる門倉と根本。
ダエルは口元を緩めながら、「手合わせで勝てるのに殴られるってなんだ」と門倉の髪をくしゃくしゃ撫でるのだった。
仁道病院に入院中の京極&岩田。
恭弥が見舞いに来ると、2人とも喜んで迎えてくれた。
2人は同じ部屋に入院していて、怪我した箇所にギプスや包帯を巻いている。
「何かいいことあったんすか?」と恭弥が聞く。
「フランスが日本でイベントをやるときには、うちの会社を指名してくれるそうだ。大使館や外務省からも連絡くるし、マスコミからの取材もある」
要するに会社が潤うってことで、2人ともご機嫌なのだった。
「よかったですね」と恭弥。
「ラノックが手を回してくれたんだろう」と京極は言う。
「お2人の活躍が大きかったので、当然ですよ」
「君のおかげだ。あんな大物と知り合えたのも、事件を無事に終わらせたのも」
「みんなで成し遂げたんです。オレだけの力じゃありません」
謙虚に受け答えする恭弥に、京極は1つ提案してきた。
会社の持分を15%譲るというのだ。
ダエルにも、相応のお礼を用意してあると言う。
恭弥は断ろうとしたが、京極は譲らない。
受けととってくれないなら、ヨーロッパからのオファーはすべて白紙にする、と言って。
「こういった申し出は素直に受け取るもんだ」
京極が大人の貫禄でそう言うと、恭弥は折れて受け取ることにした。
DIファミリーの会社にやってきた恭弥は、ミシェルからドラマ制作について話を聞く。
ビルの工事も、作家の調整も順調だとミシェルは言うが、どこか浮かない表情だ。
恭弥がそう指摘すると、「やっぱボスには隠せないわね」と前置きして問題点を話し出した。
「実は主演俳優のことで問題が起きて…」

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