第119話

森に入る前、恭弥はダエルに忠告した。

「敵は腕が立つ、気を抜くなよ」

「オレも元傭兵隊員っすよ、自分の身は自分で守るっす」

「銃撃戦は久しぶりだろう? 死に急ぐなよ」

「へいへい、わかってますよ」

そんな会話の後、いざ森の中へ。

木々に囲まれた場所に入ってすぐ、敵からの第一弾が飛んできた。

恭弥は左へ、ダエルは右に身を傾け、弾丸を避ける。

木や岩を防御壁にして、2人は一息ついた。

ダエルよりも少し前に進んでいる恭弥は、相手の正確な位置が掴めないため、慎重に戦おうと考えていた。

いっぽうのダエルは、いきなり岩から身をさらけ出し、拳銃を構えておおよそ敵がいる位置に一発目をぶっ放した。

恭弥が振り返って確認する間にも、ダエルにライフルの弾丸が見舞われる。

ダエルは岩に隠れ、どうにか身を守った。

恭弥はジェスチャーで、死に急ぐなっつっただろ、と伝えた。

しかしダエルは、ニヒルな笑みを浮かべて手で何かを合図を送るばかりだ。

恭弥はすぐに、ダエルは自分がオトリになるつもりなのだと直感した。

実際にダエルは、敵の注意を自分に向けさせるつもりでいた。

敵の居場所はオレが炙り出してやるんで、さっさと首をとってきてくださいよ

ダエルが2発目を放つと同時に、恭弥は前進した。

ダエルが弾丸を撃ち尽くす前に敵を仕留めないと、ダエルが狙い撃ちにされるからだ。

恭弥がダッシュする間に、ダエルはさらにもう一発放った。

ライフルからの応戦が、ダエルの左肩をかすめる。

血が吹き出したが、代わりに相手の位置をある程度つかめたため、ダエルは怯むことなくもう一発撃った。

いっぽう恭弥は、ダエルの無謀さに歯噛みしながらも、いったん地面に伏せて敵の反撃に集中した。

いよいよダエルに残された弾丸は、残り一発。

引き金を引いて弾丸が発射される。

(敵目掛けて飛んでゆく弾丸が、スローで描かれる。)

恭弥の目は、ダエルからの攻撃に反撃する敵の位置を捉えた。

射撃した瞬間の僅かな光が、森の奥の暗がりでチカッと輝いたのだ。

その機を逃さず、恭弥は身を乗り出した。

激しくライフルをぶっ放してくる敵は、完全にダエルだけを狙っていた。

その間にも、接近していた恭弥が、ジャンプして敵の頭上から襲いかかる。

敵はすぐに、恭弥に向けてライフルを放った。

その一発が恭弥の頬をかすめる。

次の瞬間、恭弥のナイフは敵の喉を捉えていた。

血飛沫が飛び散り、恭弥は返り血を浴びた。

恭弥の肩を掴んだ敵の左腕は、やがてその力を失って地面に落ちた。

ふう、と息を抜く。

直後、「やったっすか?」と言いながらダエルが走り寄ってきた。

「この死に急ぎ野郎が」と恭弥はがなり立てる。

「結果オーライっすよ」と、ダエルはあっさりしたものだ。

ハイタッチを求めてきたが、恭弥はその気にもなれず。

森にいる敵は片付けたが、ラノックのほうも敵が向かっていたはず。

「そっちには何人いった?」と尋ねる恭弥に、

「20人は来たっす」とダエル。

「でもすぐに応援が来たんで、今はもう制圧してるっすよ」

それにしても、銃規制されてるこの国で、なぜにまた銃を持った奴らが?

そんな疑問を抱く恭弥に、報道されずに揉み消されてるだけじゃないすか、とダエルは答えた。

引き返す途中も、恭弥はもう一つ疑問を口にした。

「ホテルの件といい、今回といい、情報が漏れてるとしか思えねえ。誰が裏切り者か、探し出さねえと」

ハウスに戻った恭弥たちを、京極が出迎えてくれた。

京極はまず治療をすすめてきたが、恭弥は先に、大使に無事を報告しに向かう。

血塗れでは会えないので、京極からジャケットを借りて。

扉を開けると、ラノックと一緒の席にいたアンヌが、ひょこひょこと歩み寄ってきた。

恭弥に抱きつき、涙ながらに言葉にする。

「心配してたのよ」

ラノックからも感謝の言葉を受けたが、恭弥は詫びを入れた。

せっかくのゴルフが台無しになったことに。

そこへ、何者かが扉を開けて割り込んできた。

恭弥に向けて、何かの言葉を注げる。

「それはどういう意味ですか?」と、恭弥は尋ねるのだった。

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