部屋の中でイメージトレーニングしている恭弥。
弱くて遅い体では戦えない、と思っていると、扉がノックされた。
恭弥の返事を聞いて母が扉を開けると、椅子に座る私服姿の恭弥がいた。
トレーニングしていた雰囲気など微塵もない。
ベッドに腰かけた母は、明日一緒にブランチに出かけようと言ってきた。
なんでも母の友達が息子を連れて、フランス人が経営するレストランで食事をするそうだ。
母はそのブランチを一緒にどうかと誘われたらしい。
恭弥にしてみれば、少しでも体を鍛えたいところだったが、母の気持ちを汲んで行くことにした。
そのお店の名前は「Martin Levasseur」、日本語にしたら「祇園食堂」と訳せそうな店だった。
店に入る前、ちょっと気合を入れた母。
店内に入ると、メガネをかけた女性と、これまたメガネをかけた高校生の息子が席について待っていた。
母は手を振り、「育子」と呼んで席に向かった。
その際、フランス人の女性客が、フランス語で話し出した。
恭弥を見て、「イケメンね」と噂している。
育子の息子『優』は、恭弥たちに、聞くに耐えないレベルのフランス語で「ヴォンジュール」と言ってきた。
優もその母親も、何か腹にひめたような陰湿な笑みを浮かべる。
それを見た恭弥は、相手の親子が何をしようとしているのか、何となく察した。
案の定、育子の息子自慢が始まった。
優はすごい先生に勉強を習っていて、語学が堪能だと。
育子から恭弥の英語のレベルを聞かれた母は、それなりに、と答えて俯いてしまう。
優が手をあげてフランス語でウェイターを呼び、簡単なやりとりで水を注文した。
もちろんそれも、フランス語のレベルを見せつけるためだ。
息子は国際化に通ってるから、フランス語も話せると自慢する育子。
恭弥もフランス語なら少し話せると、控えめに母は言う。
育子はすぐに、どんな塾なのか、どんな先生なのかを聞いてきた。
「ネットで独学を•••」と母が答えると、育子も優もプッと吹き出して笑った。
母は俯き、その笑いにただ耐えていた。
そこで恭弥が「いい加減にしろ」とフランス語を発した。
その言葉を聞いて、さっきのフランス人女性客が真っ先に反応した。
女性客はちょっと気まずそうに、フランス語で「私たちの会話を聞いてたの?」と尋ねてきた。
恭弥もフランス語で、「聞く気はなかったけど、こっちの話がつまんなくてね」と答えた。
さらに恭弥は女性客に対し、流暢なフランス語を披露する。
あんたらと遊ぶ気はないから期待すんなよ、と。
恭弥の滑らかなフランス語を聞いて、育子は悔しさで全身を震わせていた。
明るい表情を取り戻した母が「ネットで独学しただけなのに、天才なのかしら」と言うと、育子の悔しさはさらに募る。
女性客は母の言葉を聞いて、ネットで学んだだけなんて嘘でしょ、みたいなことを言う。
女性客たちが日本語も分かるとみた恭弥は、話を合わせてくれるようにフランス語で頼んだ。
お礼はするから、と。
すると、女性客3人は恭弥の近くに来て、フランス語でいろんな話に付き合ってくれた。
その様子を見ている育子は、もう我慢の限界とばかりに席を立ち、下手な言い訳をして帰ってしまう。
育子に続いて、優もそそくさと帰ってゆく。
育子とその息子を十分にこらしめてやったと見た恭弥は、フランス人女性客たちにお礼を言って、もう行っていいと伝える。
しかし女性客は、お礼を受け取ってないと言ってきた。
「何が望みだ?」と聞くと、「連絡先」との答えが返ってきた。
恭弥に興味が湧いたらしい。
引用:ピッコマ

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