第131話

「何か用か?」と聞く恭弥に、神代は言う。

「新田組に手を出したのはお前か?」

「知らねえな。仁道病院の近くで絡んできた連中はシメたがな」

神代は呆れながら、「元老たちがお前に会いたいそうだ」

「暴力団のダチはお前だけで十分だ。それに、元老ってヤツらがオレにやられても困るだろ?」

「お前が暴力団嫌いなのは、この世界じゃみんな知ってる。それでもこんなふうに潰されちゃ困るんだ。海外勢力をバックにつけた奴らがつけあがるからな」

「そんなヤツらにビビるとは珍しいな」と、恭弥は軽口を叩く。

「足を洗えっつったのは、お前だろが。先を見て動かんとな」

神代が本気だと知り、恭弥は少し目を細めた。

とにかく今は海外に出てると伝えて、恭弥は電話を切ろうとした。

「西」と、神代は真剣な顔つきで呼びかける。

「何かあったら、頼ってこいよ」

客員を呼びつけて、傭兵たちがどこにいるかを尋ねた。

後ろにいると聞いた恭弥は、さっそく出向くことにした。

扉をくぐると、傭兵たちが一斉に目を向けてきた。

しかしすぐに目を背け、ただ黙って恭弥が歩くのを見守るのだった。

ジェラールを見つけた恭弥は、テーブルの上のコーヒーを見て思う。

オレがよく飲んでたやつだ

「このコーヒー、まだあるか?」と、フランス語で尋ねる。

恭弥の頼みに、ジェラールはいぶかしむような目を向けてきた。

でもすぐに、指を鳴らして部下を呼び寄せ、恭弥にコーヒーを持ってこさせた。

「一緒に飲もうぜ」という恭弥に、ジェラールは無言を貫くばかりだ。

ジェラールは、胸のポケットからジッポを取り出した。

恭弥はすぐに気づいた。

オレが死ぬ間際まで使ってたやつだ

「畿内でタバコなんて吸っていいのか?」

やたら絡んでくる恭弥に、ついにジェラールも言い返してきた。

「大使の客だからって、いい加減にしてくれ」

恭弥は、可愛い部下を見るような目で微笑む。

「俺を知ってるのか? 初めて見る顔だが」

「日本人に会ったことはねえのか?」

「あんたが初めてって意味だ」

そんな他愛無いやりとりをしたあと、恭弥は最後に「アドバイスしてやるよ」と言って、テーブルに置いてあったジェラールのジッポを手に取った。

「アフリカで使うなら、石油をまぜろ」

その言葉を聞いたジェラールは、ハッとしたように目を見開く。

去ってゆく恭弥の背中を、ジェラールはただ見送るばかりだった。
フランスのロリアムに到着したのは、現地時間の午前7時。

飛行機から車に乗り換えた恭弥とラノックは、軽い会話をしながらとある建物まで移動した。

部屋の中にはすでに、政治家らしきフランス人が数名ほど集まっていた。

ラノックが姿を表すと、みなが寄ってきて交互に抱き合った。

ラノックはみんなに、恭弥を紹介する。

「新しい友、西恭弥くんだ」

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