京極は首斬り屋について語り始めた。
味方の陣地に密かに侵入し、痕跡も残さずに首を斬って殺すため、そう呼ばれている男の話だ。
闇夜の中、戦場で首斬り屋を仕留める計画を立てる京極たち。
部下の一人が言うには、7時間前に何者かが1人で味方の陣地に侵入する姿が目撃されているが、正体は不明。
しかし1人で乗り込んできたことから、おそらく首斬り屋であることが予想されていた。
これはつまり、今が首斬り屋を捉えるチャンスということだ
鬱蒼とした森の中で、首斬り屋に隠れられたら、探し出すのは困難。
しかし首斬り屋が駐屯地に戻るには、2つのルートしかない。
峠を越えるか、川を渡るか、どちらかだ。
そこで京極は、味方を二手に分けて待ち伏せる作戦を敢行する。
京極たちB班は3人、A班は5人のうちわけだ。
なぜなら京極は強く、1人んで3人分だからだ。
こうして二手に分かれて待ち伏せしたが、京極の願いは自分のほうに首斬り屋が来てくれることだった。
若い後輩たちは実践経験が浅く、少々荷が重いと思われるからだ。
しかし首斬り屋が現れたのは、京極がいるB班ではなかった。
A版の方に現れたと無線で聞き、京極たち3人はそちらに向かって急ぐ。
連絡があった場所までたどり着いたが、既にA班の姿はなくなっていた。
「まさか全員やられたのか?」
「縁起でもないこと言うな」
とにかく5人がいることを確かめるため、京極たちは周囲を探し始めた。
そして、A班が全滅させられていたことに気づく。
怒りに燃える、京極。
木に何らかの合図を発見し、さらに進むと血痕が地面に残っているのに気づいた。
どうやら戦いはあったようで、首斬り屋も負傷しているらしい。
さらに進むと、やや離れたところに首斬り屋の姿が!
京極はすぐに突進しようとするが、味方の2人に止められた。
首斬り屋がいる場所はすでに敵の陣地のため、踏み込んでいったら一瞬で敵が群がってくる、と。
それでも強引に突き進もうとする京極。
2人の味方に体を抑えられ、すぐ目の前に首斬り屋がいながら何もできない。
首斬り屋は暗闇の中で、指で首を横に斬る動作を見せつけてきた。
京極は叫ぶ。
「首斬り屋、お前の顔は覚えたからな。必ず俺が殺す」
首斬り屋は背を向けて、暗闇の森の中へ消えていった。
回想から戻った京極は、恭弥の前で打ち明ける。
「それから私は、首斬り屋を殺すと暴れたせいで、除隊させられた。そうならなければ1人で敵陣に乗り込んでただろう」
さらに京極は話を続けた。
「生き残った2人のうち、1人は情報局、もう1人はその部隊の隊長だ。情報局にいるやつが、シャフランの件に関わるなと言っていた。最近、中国とフランスの動きが怪しいからと」
そして京極は、表情を強張らせてこう言った。
「私がこの件に関わらざるを得ない情報がもう1つある。首斬り屋が今、中国の情報局にいるらしいのだ」
「では、中国に?」と恭弥が問いかけると、京極はこう続けた。
「奴は今日本にいる。シャフランが入国する前に、通話した相手のリストに入っていた」
「なんですって?」
どうやら、シャフランと首斬り屋には繋がりがあるらしい。
京極いわく、首斬り屋は今は有限会社の社長で、日本にいる。
貨物船を貸し切って、シャフランを海外に逃す計画を立てている、と。
「本名か偽名か分からないが、首斬り屋の名は劉珉邦」
こうして、恭弥と京極の利害は一致した。
京極の目的は、劉珉邦を倒すこと。
恭弥の目的は、シャフランを始末すること。
お互いに向き合って、口元を緩めた。

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