第109話

後藤組の件について尋ねられた恭弥は、「何人かシメただけだ」と軽く答えた。

幹部が検挙されたって話は、流れでそうなった、と。

神代は、「古株のジジイどもがうるさくてな」とだけ言って、深追いして来なかった。

「オマエは組をやめねえのか?」と、恭弥が唐突に尋ねる。

「俺一人ならな」と、神代は軽く笑みを作った。

松田や五十嵐など、弟分の立場が悪くなるため、神代は組を抜けることはできないのだ。

「俺がいるからこそ、平和が保たれてる面もあるんだ。お前なら、分かるよな?」

「ああ」

すると神代は、「そこでひとつ、手を貸してくれねえか?」と頼みを口にした。

恭弥はとりあえず、内容を聞く。

神代の下には、100人ほどの舎弟がいる。

そいつらをまとめて連れて行けるような会社を用意して欲しい、との頼みだった。

松田から、恭弥にはビジネスの才能があると聞き、さらに政府が推進している仕事にも関わってると知ったらしいのだ。

「本気か?」

「ああ」

ワインを飲みながら、神代はちょっとした人間関係の話をする。

「同年代の連中は全員くたばった。ダチの半分以上は自殺だ」

自分は特別、という考えもあったが、まだ順番が来てないだけだと思い始めたらしい。

「何より、娘が話すようになってな。俺を見て、パパってな」

足を洗いたいが、どうしていいかも分からず…

「オマエらが抜ければ、他の組が乗り込んでくるだろ」と恭弥が尋ねる。

「シマは守る。これまで貯めた金でな」

暴力団の世界も、近頃は金がものをいう、と神代は付け加えた。

恭弥は、神代の希望を理解した上で、こんな話を持ちかける。

「稼いだ金を、困ってる人たちに寄付できるか? 過去を清算したいんなら、金もそうするのが筋だ」

さすがの神代も、ちょっと驚きの表情を浮かべる。

「できるなら、手を貸してやる」

そう言い残すと、恭弥は食事の礼を言って席を立った。

席に残った神代は、考え込むような表情を浮かべていた。
タクシーで移動中、恭弥はダエルと軽く通話した。

帰る前に、学校でトレーニングする、と。

直後には父から電話が入り、官房長官の秘書から連絡が来た、とのこと。

「母さんの財団を支援してくれるとかで、明日は官房長官室に呼ばれたんだが、何か聞いてないか?」

父からそう聞かれてはしょうがない。

仕方なくトレーニングは諦め、説明するために自宅へ向かった。

自宅のリビングで、両親相手に説明する恭弥。

フランス大使のラノックが、日本の発展につながる事業のキーパーソンになっている。

ひょんなことから、フランス語ができる恭弥が交渉の橋渡し役に選ばれた、と。

「(訪問するための)服は、オレがプレゼントします」

ということで、これから家族でデパートに行くことになった。
総理官邸にて。

官房長官の原田が、なにやら退任を申し出ていた。

原田は、椅子に座った相手に向かって、ユニコーンプロジェクトの行く末を案じるような台詞を放つ。

その男とは、内閣総理大臣『沢村義雄』である。

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