第80話

スケールの小さな問題に巻き込まれることに、ちょっと表情を引きつらせる恭弥。

とりあえず、不良女子たちの言い分を聞く。

女子が言うには、トロントスクエアで恭弥が割って入ったことは気まぐれで、指を折られた相手は運が悪かったに過ぎない。

そのせいで、不良たちは外も出歩きにくい。

2年生なんかは、週に一回呼び出されては逃げているそうだ。

「それなら姫野と鬼塚は、やられると分かってるのに何で毎回行くんだ?」と恭弥。

「そうしないと、もっと酷い目にあうから」

不良女子が言うには、恭弥が集会に出向いて、手を出すなと言って欲しいとのこと。

恭弥は表情を引き締めて、こういった。

「断る」

恭弥の言い分はこうだ。

不良たちは今まで弱い者をいじめてきたのに、なぜやられる立場になった今になってそんなことを頼める?

「オマエらがいじめてきたヤツらにしたこと、忘れたのか? 今までの罪に対する罰だと思って反省するんだな」

不良女子たちは、それでも頼んでくる。

「あのとき、トロントスクエアで終わらせることになってたの。そこにあんたが現れたから…」

「オレのせいだってのか? ならなんでオレにかかってこねえ? 勝てねえからか?」

恭弥が声を張り上げると、女子たちは俯き、なおも頼んできた。

もういじめもしないから、と。

恭弥は揺るがない。

「オレが一言いえば、どうせ手を出せないだろう」
女子たちは、恭弥が学校にいる今はそうでも、来年は違うと言う。

来年以降もいじめをなくすからと、恭弥になんとか頼み込むのだった。

恭弥は、来年以降に学校がどうなるかを想像した。

自分が卒業すれば、またいじめは蔓延する。

運動部の連中は自分の身を守れるようになったが、不良たちはまた別のターゲットを見つけるだろう。

恭弥はため息をついて、集会の場所を聞いた。

「車で20分くらいで着くわ」

遠くない場所に連れ出すのは、罠にハメるときの常套手段だ。

と気づきながら、恭弥はその集会に行くことにした。

30分後だ。

運動部の部室で、サンドイッチを食べながらダエルと話す恭弥。

これから集会に出向く話だ。

来年以降もいじめをなくすという不良たちの言い分を、恭弥は信じちゃいなかった。

「なら無視すりゃいいじゃないすか」とダエル。

「この学校じゃ大人しくしてても、外じゃ何するか分かったもんじゃねえっすよ」

「まあ、約束しちまったからな」と恭弥。

タクシーを用意していた不良たち。

到着した場所は、工事中のビルだった。

不良たちと一緒に階段を登っていくと、集会が行われている場所に出た。

俯く学校の不良たち(いじめられる側)。

鉄パイプや金属バットを持つ男たち(いじめる側)。

そして姫野と鬼塚は、地面に膝をついて俯いていた。

その顔にはアザが浮かび、シャツも血で汚れていた。

そこへ、恭弥登場。

「2人とも、立て。学校の連中は全員帰れ」

相手のリーダーらしき男が出てきて、恭弥の前に立った。

タメ口をきく恭弥に、自分のほうが2つ年上だといって脅しつけてきた。

まだ帰らない不良たちを見て、恭弥はさっさと帰るように伝える。

しかし姫野と鬼塚が、帰れない理由を話し出した。

この建物は、その先輩(リーダー)の父親のものらしい。

新田組のボスで、周囲で待ち構えてる可能性もあるから、出られないという。

恭弥は、さっき学校で話した不良女子たちに問い止めた。

「オマエたち、わざと俺をここに連れてきたってことか?」

「自業自得よ」と不良女子。

「いじめをなくすって話も嘘か?」

「当然」

恭弥は改めて、リーダーの男に目を戻した。

「こいつのほうが、(トロントスクエアで)指を折ったやつより上なんだな?」

「ああ」と鬼塚。

でも、さらに上のリーダーがいるという。

姫野は、鋭い目で恭弥にお願いしてきた。

「あたしらがいじめをなくしたら、最後まで守ってくれる?」

恭弥は、姫野の度胸を心の中で認めつつ、「そうだと言ったら?」と答えた。

姫野はもう1つ、約束を取り付けてきた。

「あの3人(不良女子たち)は、あたしの好きにしていいと約束して」

「好きにしろ」

姫野はいかつい表情を浮かべ、「死ぬまであんたを信じるわ」と口にした。

恭弥はリーダーに、忙しいんだからさっさと暴力団を出せ、と促した。

リーダーの声によって、レスターみたいにガタイのいい男たちが姿を表した。

その数、6名。

「殺してもかまわねえんだよな?」と口にする男たち。

恭弥は不思議に思った。

山本組をぶっ潰した噂は、連中の耳にも届いているはず。

なのに、この数か?

オレってなめられてんのか?

コメント

error: Content is protected !!
タイトルとURLをコピーしました