恭弥から答えを促された愛子。
隣に座る2人の女優からは、冷たい視線がぶつけられていた。
「私は」と、体全体を震わせながら、愛子は言う。
「残りたい、です」
薫から即座に、「裏切り者」との言葉が浴びせられた。
でも愛子はキッパリと、「ミシェル理事長と一緒にやっていきたい」と口にした。
「決まりだな」と恭弥。
本郷部長に、全員の契約書を持ってくるように指示した。
テーブルに置かれた契約書の中から、恭弥はまず、如月薫と若槻麗香の書類を手にした。
そしていきなり、両手でビリビリと破り捨てる!
2人の契約解除について、本郷部長に指示を出した。
怒りに燃える薫は、この世界で生きていけなくなることを、全員に向けて言い放つ。
しかし恭弥は止まらない。
薫の言い分など、まるで無視した。
その上で、契約社員よりも正社員のほうが待遇が良いことを、本郷部長に確認した。
もともとシャフランに対抗するために手に入れた会社で、契約には関わらないつもりだった。
ところが、気に食わないことばかりだ。
契約社員の書類を丸ごと両手で掴み、分厚いままビリビリと破り捨てた。
その握力に、みなが心の中で驚く。
「全員、契約書を書き直します」
そう宣言した後、恭弥は社内改革を口にしてゆく。
まずはミシェル。
まだ会社に入って日が浅いため、収入も決まっていないというが、恭弥はこう言った。
「年収1500万円」
驚くミシェル。
「少ないか?」と、恭弥はあくまで冷静だ。
「そうじゃなくて。会社の財政状況や、社員との公平性も考えないと」
恭弥は構わず、改革に手を入れてゆく。
40代前半の西野室長は、世間の平均年収の倍額。
30代後半の本郷部長も、やはり同年代の平均年収の倍額。
「一人ずつは手間なので、こうしましょう。誰でも希望するなら正社員になれて、年収も同年代の倍額が基準」
タレントにもテコ入れを施す。
「契約金は以前の3倍。契約金さえ返済するなら、事務所を変えても構わない」
看板タレントに対する優遇措置だ。
さらに恭弥は、練習生に対しても、手厚い保証を加えると宣言した。
事務所も狭いからと、隣のビルを購入することまで、この場で決めた。
自分は詳しいことはわからないからと、西野にすべて任せる形で。
「金額は気にしないでください」
そんな話を聞いていた薫は、目つきを鋭くして言い放つ。
「勝手につぶれてくれそうね」
ミシェルは、恭弥の暴挙を止めにかかった。
「後先考えずにお金を使うなんて。恭弥がお金持ちなのは分かってるけど…」
「誰がオレの金を使うと言った?」
そして恭弥は、フランスの会社『クレディ・ベンチャーズ』を引き合いに出した。
それがメディア業界では世界的に有名な投資会社であることは、ミシェルも知っていた。
そこに投資の申請を申しこむよう、恭弥はミシェルに指示した。
「話はもうついてるから」と。
「金額はいくらで?」
「いくらでも構わない」
不安そうな顔を浮かべるミシェル。
すると恭弥は、みんなに向かって宣言した。
「オレは経営に関してはまったくの無知です。でもオレには、特殊な経験がある」
面々が、恭弥の話に耳を傾ける。
「オレは、味方と思った人間を絶対逃しません。しかし、無理やり捕まえたりもしません。去りたいなら去ってください」
戦場で部下たちを守りながら戦っていたことを思い出しながら、恭弥は話を続けた。
「オレのそばにいたほうが安全で、一番幸せだって分らせてやれば、オレのために命を尽くして戦ってくれることをよく知っています」
最高の待遇でもてなすことを約束する。
だからそれぞれが、自分の持ち場で最善を尽くしてください。
この言葉にそれぞれが感動し、元気に返事した。
西野室長は涙を浮かべるほどだった。
ミシェルもまた、「イエス」と言葉にした。
そして最後に恭弥は、薫と麗香に向けてこう言った。
「オマエたち、まだいたのか? ここはうちの事務所なんだがな」

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