「誰だ?」と聞いてくる相手に答えもせず、恭弥はこんなことを思う。
知る必要などない
てめえら、みんなここで息の根を止めてやる
そしてすぐに、自分の気持ちにハッとなる。
相手はただの大学生なのに、自分は何を考えているのかと。
ゴルフ場で命のやりとりをしただけに、まだ気持ちの高ぶりがおさまらないのだろう。
落ち着け、と自分に言い聞かせた。
まず1人がしゃしゃり出てきて、「こねえなら、こっちから行くぜ」と拳を繰り出してきた。
右手であっさりキャッチした恭弥は、冷静な表情で伝える。
「オレを怒らせんな。オマエらのために言ってんだ」
カチンときた相手は、恭弥の股を狙って蹴り上げてきた。
スッと左に避けた恭弥は、チョキで相手に目潰しを喰らわせる。
リーダーが号令をかけ、連中は一斉にかかってきた。
一人目の拳をガードすると、そいつの頭に手を置いてジャンプ!
すぐさま別の蹴りが飛んできて、左腕でガード!
突進してきた相手には、バックステップで距離を置く。
「ちょっとはさまになってんじゃねえか」
と一言添えてから、相手の左手に拳を浴びせて指を砕いた。
さらに、右の拳で相手の頬を打ちつけ、ノックアウト!
次なる相手は、2人同時に対処した。
まずは左の男に右ストレート、その反動を生かして、右の男には裏拳を見舞った。
さらに3人、素早くも強烈な左ジャブを立て続けにヒットさせる。
そうしている間にも、相手の一人が根元の手をつかむ。
「きゃっ」
と悲鳴を上げた根本に気づき、恭弥はその男に左のミドルキックを喰らわせる。
「女を狙え」
その声を皮切りに、連中の目が根元に向いた。
しかし恭弥が立ちはだかり、あっさりと4人の頬を捉える。
その後も恭弥を中心にした大立ち回りは続く。
いっぽう、一番後方にいたリーダーは、誰かに電話をかけていた。
「すぐに来てください」
また1人を倒した恭弥は、後ろからの飛び蹴りをさっと避ける。
その蹴りは、恭弥の後ろにいた男に突き刺さった。
背後に回った恭弥は、左の脇腹に強烈な一撃!
倒れ込む男の左腕を取り、捻るようにしてゴキゴキッ!
恭弥は冷静に考えていた。
もう少しひねれば、この腕は使い物にならなくなる
少しの逡巡のあと、恭弥はその腕を放した。
「やめだ。オレの気が変わんねえうちに、さっさと消えろ」
恭弥は、根本と馬場に「帰るぞ」と声をかけ、引き下がろうとした。
しかし、大学生の1人が懐からナイフを取り出したため、再び恭弥の逆鱗にスイッチが入る。
ついこの間、ゴルフ場でナイフを使い、スナイパーを屠ったシーンが恭弥の脳裏をよぎった。
恭弥は馬場に対し、根元を連れて先に行くよう指示を出す。
「でも、先輩を置いて…」
言いかけた馬場は、恭弥の表情を見てゾクっとする。
「いいから行け」
2人が去り、1人になった恭弥は、相手に忠告する。
「ナイフを捨てろ。そうすれば見逃してやる」
相手が聞くはずもなく、恭弥の顔面目掛けて突き出してきた
さっと避けた拍子に、前髪がはらりと落ちた。
相手の手首を掴み、まずはナイフを奪う。
そのまま相手の腕や手に、ザクッザクッとナイフの切先を浴びせた。
ふと背中から、強面の男たちが6人ほどやってきた。
大学生のリーダーが、さっき電話をした相手だろう。
中には鉄パイプを持つ者もいる。
「この人数相手に、大した野郎だ。てめえが西だな」
大学生たちの上役と知った恭弥は、見せしめにするつもりでナイフを構えた。
しかし、連中の後ろから何者かがやってきたらしく、連中は一人ずつ倒れ、数を減らしていった。
連中は、恭弥からは壁になって見えないところで、そちらの対処にあたるが、やられる一方だった。
やってきた3人の男たちを見て、戦い慣れた連中だと恭弥は思っていた。
相手を全て倒した3人は、恭弥の前に立って挨拶した。
「初めまして、安西と申します」
「井川です」
「宇野です」
何者かと問いかける恭弥に、安西は「黒川チームの部下です」と報告する。
倒した連中の処理も、引き受けてくれるらしい。

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