京極が連れてきた若い警備員たちを前に、恭弥とダエル(須賀先生)はこっそり打ち合わせる。
いきがってる新兵をいかにしてしごくか、傭兵時代の血が騒いでいるようだ。
いっぽうの警備員たちは、明らかに不満そうな表情を浮かべていた。
高校の運動場で、しかも教官は体育教師と高校生ときたもんだ。
入院した同僚たちからは、すでに恭弥とダエルの噂を聞いてはいたが、それでも信じられないのだ。
恭弥の背中にいる運動部員に目を向けると、ただの高校生である。
鍛えている様子もない。
社長は何考えてんだ? という疑問を浮かべるばかりだ。
そんな警備員たちの様子を見て、社長はニヤリとする。
予想通り不満そうだな、と。
まず手始めに、恭弥はランニングで体をほぐすことを提案した。
ルールはいたってシンプル。
周回遅れになったものから脱落していき、最後の1人になるまで走り続ける、というものだ。
要するに、体力のないものから落ちてゆくシステムだ。
「社長は無理しなくてもOKですよ」と恭弥。
カチンときた京極は、張り切ってジャケットを脱いだ。
「これでも現役だ。参加させてもらう」
軽くストレッチしたあと、運動部の面々が訪ねてきた。
「僕たちも参加するんですよね?」
「心配すんな、すぐに抜けさせてやる」とダエル。
総勢12人が、一斉にスタートした。
恭弥とダエルを先頭に、警備員たちが続き、最後に運動部員がついてくる。
恭弥はダエルに、まずは運動部の連中を片付けると宣言した。
ダエルの了承とともに、一気に速度をあげる2人。
京極が、警備員たちに発破をかける。
「負けてられんぞ。最初に脱落したやつは、給料を下げるからな」
1周もしないうちに、恭弥とダエル、京極と警備員たちは、あっさりと運動部員たちを抜き去った。
脱落した運動部員たちは、ダエルに命じられ、木陰で休むことになる。
「ヒヨコは片付けた。次は自分がワシだと思ってるニワトリだな」と恭弥。
「煮ます? それとも焼きます?」とダエル。
新兵のしごきかたを思い出したのか、ダエルはぽつり呟いた。
「懐かしいっすね」
直後、恭弥とダエルは、あっさりと警備員たちに抜かれてしまった。
警備員たちは、それぞれが心の中で恭弥たちをバカにする。
ざまぁねえな。
こんな馬鹿げたランニング自体、なくさせてやるぜ!
みるみるうちに、警備員たちから遅れをとってしまう恭弥とダエル。
もうかなりの差がついただろう、と思った警備員の1人がちらりと後ろを見ると…
まだすぐ後ろに、恭弥とダエルの姿がある!
長距離走ではなく、短距離走のような走りで、競争を続ける恭弥たち。
20周目に差し掛かった。
警備員たちは、明らかに息切れしている。
ついに、警備員の1人が目眩を起こし、その場に倒れ込んでしまった。
「まだ脱落してないのに、諦めんのか?」とダエル。
さらに走り続けると、警備員たちが1人1人と脱落していった。
最後に残ったのは3人、恭弥とダエル、そして京極社長だ。
先頭を走る京極は、後ろから平然とついてくる2人の気配を感じながら、こう思っていた。
なんて意地の悪いやつらだ…だが、身体は老いても、プライドは老いていないぞ!
ダッシュで差をつけた京極だが、恭弥もダエルも余裕があった。
これが傭兵団の伝統だ、と思いながら、走り続けていた。
45周目。
ついに、京極が根をあげた。
地面に倒れたりせず、降参を認めて立ち止まったのだ。
息を切らしながら恭弥たちに向き合い、尋ねる京極。
「わざと、後ろについて走ったんだろう?」
「必死に走っただけですよ」と、恭弥は清々しい笑顔で答えた。

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