川崎には罠が待ち構えていると踏んだ恭弥の意見を聞き、京極も深く考え始めた。
するとダエルが、食べながら口を挟む。
「もっと単純に考えすべきっす。連中の標的はラノックっすよ」
「考えがあるのか?」と恭弥が聞く。
京極も表情を引き締め、ダエルの言葉に耳を傾けた。
ダエルは真剣な表情を作り、こう言った。
「ねえっす」
ハッとしたかのように、恭弥と京極は真顔になった。
そしてダエルは、もぐもぐと食事を再開する。
恭弥もまた、何も言わずに食べ始めた。
だよな…期待したオレがバカだった…
京極の電話が鳴り、劉珉邦がいま群馬にいるという情報が入った。
岩田が劉珉邦をマークしていて、そこからの情報だという。
「ラノックに知らせてはどうだ?」
京極に言われ、さっそくラノックに電話する恭弥。
ラノック本人は面談中で出られず、部下が恭弥の言葉を聞いた。
恭弥からは、北朝鮮の特殊部隊が近くに来ているため、ラノックが危険であることを伝える。
すると向こうから、ラノックは今、群馬にいるとの情報がもたらされた。
リヨンと群馬が姉妹都市になるため、その記念行事に参加中とのこと。
こうしてはいられず、すぐに会計を頼んだ。
車に乗り込んだ3人。
ラノックの正確な位置は、面談が終わってから本人から連絡が来る予定だ。
それまではとりあえず、現場に向かって移動するしかない。
ダエルがスマホを取り出し、ネットで探り始めた。
「姉妹都市提携なら公式行事だし、ネットに情報あるかもしれねえっす」
案の定、情報が出ていた。
確かにラノックは、今群馬にいるようだ。
移動中、恭弥は不安に思う。
もしオレがラノックの味方だと連中にバレたら?
今まで築き上げてきたものが一瞬にして壊れてしまう…
だが!
逃げたヤツはまた捕まえることもできるが、死んだヤツは蘇らない!
オレとダエルは例外だが。
とにかく、この道で間違いはない!
ラノック救出が最優先だ!
劉珉邦がどんな手を打ってくるか、予想する京極。
ラノックは、防弾仕様の車に乗っている、と恭弥が言うと、京極は自分の意見を語り出した。
「防弾仕様でも、停車中に攻撃されたらひとたまりもない。攻撃側が防御側より有利になる」
納得した恭弥は、ハッと閃いた。
「それなら、オレたちから攻撃を仕掛けましょう!」
岩田が劉珉邦の位置を把握してるのだから、先手を打つ作戦だ。
「悪くないな」と京極。「様子を見て、機会があればそうしよう。しかし、すぐにはできない」
恭弥は、京極の言葉に耳を傾ける。
「まだ何もしていない劉珉邦を攻撃すれば、私たちが犯罪者になってしまう。攻撃するなら、大義名分が必要ってことだ」
恭弥もすんなり納得した。
現場について、車を駐車場に停めた。
ラノックの車も停められていた。
人が多いだけに、劉珉邦もすぐには行動できないだろう、と恭弥は予想した。
「行事が終わってから動くんじゃないでしょうか?」
京極もその意見に同意する。
3人とも車を降り、トランクを開けて武器を装備する。
防弾チョッキもあったが、恭弥は遠慮した。
目立ちそうだから、という理由で。
空は清々しいほどの快晴だ。
少し待機する間、恭弥はラノックに電話を入れた。
ラノックはすでに、さっき恭弥から側近に伝えられた情報を聞いていた。
劉珉邦が近くにいる、という情報だ。
「間違いないんだな?」とラノック。
「暗殺かどうかはまだ分かりません」と恭弥は言う。
でも間違いなく、この場に危険な相手がいる、と。
「情報局でも掴めていない情報だ」と言って、ラノックは感心した。
相手の人数は不明だが、恭弥たちは3人で来たことも伝えた。
電話を切ると、京極はやや離れた位置を指差し、恭弥に伝えてきた。
「首斬り屋だ」
顔や首に切り傷を負った男が、車の近くでタバコを吸っている。
恭弥と京極の表情が引き締まった。

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