首斬り屋の姿を発見した京極に、恭弥が問いかける。
「間違いないですか?」
「ああ。嫌ってほどはっきり覚えてる」
京極の表情は、鬼神みたいに怒りに満ち溢れていた。
目をたぎらせ、歯を食いしばり、今にも飛び出していきそうだ。
恭弥に宥められ、いったんは車に引き返す。
車に戻った3人は、やや離れた位置から首斬り屋の動向を伺った。
連中のうち2人が、飲み物などを買い出しに出ていた。
2人が車まで歩み寄ると、扉が開いて、中の様子が見えた。
連中の数は、首斬り屋を含めて6人。
多くもなく、少なくもない、暗殺には適した人数だ。
京極が電話で、岩田に連絡をとる。
岩田からも、6人で間違いないと連絡が入った。
京極から岩田に、連中の退路をふさぐ役割を頼んだ。
恭弥は意見を述べる。
「首斬り屋は、シャフランを見切ったようですね。あまり利用価値がなかったんでしょう」
だから首斬り屋は、情報を流して恭弥たちの目をシャフランに向けさせた。
恭弥たちがシャフランを襲ってる隙に、自分はラノックを狙うため!
恭弥たちにとって、現状での問題は、首斬り屋たちを倒した後始末だ。
「それは私がなんとかしよう」と京極。
部下たちを使って処理するつもりなのだろう。
(首斬り屋以外の)相手が誰なのかはっきりと把握できてない以上、後始末はラノック側には任せられない用件なのだ。
「いつ動くんすか?」とダエル。「すぐにでもやりましょう」
さっきも伝えたことを、京極はもう一度冷静に説明した。
現状では、連中は外国人事業家なのだ、と。
ちょっとふてくされたダエルに、恭弥が軽い口調で伝える。
「難しく考えるなよ」
「そっすね」とダエル。
2人の関係は、京極には不思議だった。
生徒と先生なのに、生徒のほうがタメ口で先生が敬語なのだから。
夕方になり、ラノックの部下から恭弥に電話がきた。
いよいよ、ラノックの車が移動するのだ。
でもどうやら、ラノック本人は乗っていないようだ。
ラノック車の少し後ろから、京極の車がついてゆく。
バックミラーを見れば、連中の車もついてきていた。
やがて夜になった。
ラノック車は人気の少ない道を走っていた。
両側を木々に囲まれた道だ。
ラノック車の者たちと連絡を取り合い、そのまま少んでから、さらに細い脇道に入った。
そしていよいよ、ラノック車が道を塞ぐように停まる。
京極も、車を脇に寄せて停めた。
連中が来るまでのほんの少しの時間に、恭弥たち3人は、ラノック車まで移動する。
ラノックの車をバリケードにして構えた3人。
連中の車もすぐに来たが、誰も降りてはこなかった。
不気味な緊張感が走る。
ダエルが、連中が逃げてしまう懸念を口にした瞬間、連中を挟み撃ちにする車がやってきた。
岩田たちだ。
その時、恭弥が真っ先に、連中が銃を持っていることに気付いた。
「伏せろ」と叫んだ直後には、車を降りた連中が一斉に射撃してきた。
日本での銃撃戦は稀有だ。
連中が意地でもここで決着をつけるつもりだと、恭弥は感じ取った。
相手が銃を撃ってくるなら、こちらにも銃がなければ対抗できない。
恭弥はすぐさま、ラノックの車に乗っている部下たちに、銃をくれと頼んだ。
まずは京極とダエルに手渡し、自分も受け取る。
ライフルを持つ相手に対し、こっちはただの拳銃である。
このままじゃ不利とみた恭弥は、連中の背後に回るため、林の中へと駆け込んだ。
拳銃を持ち合わせていない岩田たちは、車の陰に隠れるしかなかった。

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