カフェテラスで会話中の、恭弥とダエル。
恭弥はテレビ局へ、ダエルは運動部を見に行く、ってことを伝え合う。
ダエルは椅子にもたれて背伸びしながら、思い出したように言ってきた。
「そうだ。今度、うちにも来てください」
恭弥はすぐにOKした。
タクシーに乗った恭弥の耳に、ラジオニュースが届いていた。
北朝鮮への裏金送金問題で、野党が政府を糾弾しているそうだ。
小太りの運転手は、政府に対してぶつくさと不平を漏らす。
「市民はやりきれねえよ、お客さんもそう思うでしょ?」
「政治には興味がないので…」
テレビ局に到着した恭弥は、ミシェルを通して監督や脚本家と対面を果たした。
柳木賢治監督と、遠藤先生だ。
人通りのある場所での邂逅だったため、その様子を離れたところから見ている者がいた。
若い女性と、その母親だ。
「あれ、あの人…」母がポツリつぶやいた。
娘は、母親が監督と脚本家を見ていると思ったが、違った。
母親は、恭弥を見ていたのだ。
建物内にあるオープンカフェで、コーヒー片手に一休みする恭弥とミシェル。
万事順調に進んでいるのは恭弥のおかげよと、ミシェルは嬉しそうにしていた。
恭弥のスマホがなり、その場で出た。
母からだ。
「今、テレビ局にいるんでしょ? 私の友達が、娘と一緒にそこにいるらしいの」
母いわく、その娘は女優志望とのこと。
テレビ局に売り込みにいったタイミングで、ちょうど恭弥を見かけたそうだ。
「履歴書だけでも見てもらいたいそうよ。ダメかしら?」
「そのくらい、いいですよ」
話を聞いていたミシェルも、なんとなく状況は把握できたようだ。
ミシェルはすぐに、作品に参加させることを提案する。
「脇役ならいくらでもあるわ。適当に役を作ってもいいし」
そんな会話をしていると、例の母娘が姿を見せた。
「早川サクラと申します」
頭を下げた娘に対し、恭弥も立ち上がって挨拶する。
「友達の息子相手に、そんなに畏まらないでください」
すると母親のほうから、娘の履歴書について切り出してきた。
「ミシェル理事長に渡してください」
ミシェルはフランス語で恭弥と会話し、その場で話がまとまったふりをする。
相手にプレッシャーを与えないための配慮らしい。
母娘に向けて、恭弥のほうからキャスティングを決めるという話を持ち出す。
いきなり役が得られそうな幸運に、びっくりする母娘。
「ドッキリですか? 本当にいいんですか?」
「本当ですよ」
大喜びする母娘を尻目に、恭弥はミシェルに挨拶して去ろうとした。
ミシェルは、今週末の予定を聞いてきた。
「一杯付き合ってほしいの」
恭弥は軽くOKし、ビルを出た。
ビル前の通りでスマホを操作しながら、タクシーを待つ。
ふと、心臓がドクンと鳴った。
すぐに、鼓動が早まってゆく。
ドクン、ドクン、ドクン、ドクン、ドクン、ドクン…
最初は小さく、だんだん大きく。
景色までカラフルさを失い、青一色に見えてしまう。
何らかの危険が迫っていると、体が教えてくれているのだ。

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