なんらかの危険が迫っていると感じ取った恭弥は、タクシーで移動しながら、まずはラノックに連絡を入れた。
しかし、間の悪いことに、ラノックはいま面談中とのこと。
(通話に応じたのは、ルイという若い男性だった。)
恭弥はルイに、「直感は信じるか?」と尋ねた。
「ゴルフ場のときみたいに、何かが起きる予感がするんだ」
そう言ってラノックの予定を聞くと、ルイはすんなり教えてくれた。
警護についても尋ねたところ、UBコップが外部を、ラノックの側近たちが身辺を、それぞれ守っているそうだ。
問題ないと判断した恭弥は、最後に一言を添えた。
「急な予定変更で外に出る場合は、オレからの頼みと言って止めてくれ」
どうやら、今回の胸騒ぎは、ラノックが対象ではない。
なら、誰だ?
まっさきに浮かんだのは、山で戦ったときのこと。
逆さに吊し上げられたダエルの姿だった。
次に、両親が狙撃されたかのような姿が浮かんだ。
タクシーを降りた恭弥は、ダエルに連絡を入れた。
恭弥の直感が百発百中であることを知っているダエルは、話を聞いてすぐに気を引き締めた。
恭弥は、すでに黒川にも連絡を入れたことを伝える。
「それで、今回のターゲットは誰なんすか?」
「詳しくはまだわかんねえ。とりあえず自分と家族を守って、いつでも動けるようにしておけ」
空を見上げれば、穏やかな快晴が広がっている。
自宅があるビルを見上げ、恭弥は表情を引き締めるのだった。
帰宅した恭弥を、母が出迎えてくれた。
「何か変わったことは起きてませんか?」
「いきなりどうしたの?」
恭弥はほっとしたように、「いえ」と言ってシャワーに向かう。
風呂場から出ると、ソファに座った母と軽く会話して自室へ向かった。
ベッドで横になると、いつしか胸騒ぎも消えていることに気づいた。
うとうとし始め、今回の胸騒ぎは病院で注射を打ったせいかも、と結論付けて目を閉じた。
目覚めてすぐに、時計を確認する。
午後7時過ぎ。
部屋から出ると、夕食を準備中の母がいる。
ほっとして、食卓についた。
食べながら、母と会話しはじめた。
「ところで、父さんは?」
「今日は遅くなるって。埼玉にオープンした展示場を見に行ってるの」
帰りが遅くなると聞いて、恭弥は眉をひそめる。
「食べたら、父さんのとこに行ってみます」
「今から?」
「驚かせようと思って」
母はドラマを見る予定らしく、心配はなさそうだ。
地下の駐車場に向かった恭弥は、背中から車の音が聞こえて振り向いた。
ダエルが車で迎えにきていた。
2人で会話しながら、埼玉へと向かう。
「思い過ごしだといいんだがな。オレの直感が毎回当たる保証もねえし」
「アフリカじゃ、毎回当たってましたけどね。それに、東京なら何かあっても対応できる人がいますけど、埼玉では」
ダエルはさらに、UBコップが恭弥の父を守ってるが、まだ未熟だから心配だ、とも言った。
夕闇が降りる時間帯、ダエルは車を飛ばすのだった。

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