第101話

恭弥が運転する車が、夜の車道を走っている。

スマホが鳴り、耳にイヤホンをして受信した。

ラノックからの連絡だ。

ラノックはオフィスの椅子にゆったりと腰掛け、リラックスして電話している。

お互いに軽く挨拶したあと、ラノックがもうすぐこちら(日本)に来る予定だと言ってきた。

シャフランの件についての謝罪も兼ねて、一緒に食事したいという。

恭弥はすぐに直感した。

なにかまた、頼みごとがあるんだろうな、と。

とりあえず快活に「わかりました」と答え、通話を終えた。

帰宅した恭弥は、母の出迎えを受けた。

軽く言葉を交わすと、自室に戻って床についた。

翌朝。

ベッドボードに置いたスマホが鳴り、相手をチェックしてから受信した。

京極からの連絡で、時間がとれたら病院に来てほしい、とのこと。

恭弥に紹介したい人がいるらしい。

(京極の隣には、スーツを着た何者かの背中が描かれている。)

1時間くらいで行けます、と答え、通話を終えた。

車で移動中、またしてもスマホが震えた。

相手は恭弥の名前だけ確認すると、ぶっきらぼうな言葉使いでこう言ってきた。

「麻布西警察署の剛田だ。お前には傷害の疑いがかかっている。署まで来てもらおう」

恭弥はすぐに、デイビッドにチクられたと直感した。

いきなりのタメ口にイチャモンをつけると、相手はさらにマウントを取ってきた。

「警察相手に口答えとはな。とにかくすぐに来い」

「用事をすませたあとでいいですか?」

「ふざけるな。強制逮捕されたいのか」

そんなやりとりの挙げ句、恭弥はすぐに行くことを了承した。

デイビッドに対し、復讐ならいつでもしてこいと言ったことを、ちょっと後悔しながら。

とりあえず京極に連絡し、遅れる旨を伝えることにした。

「先にこっちに来れないか? 紹介したい人も忙しいんでな」と京極。

「それが警察に呼ばれてまして…」

というわけで、Uターンして警察署へ向かうのだった。

剛田は、鍛えた体にいかめしい顔立ちの男だった。

薄茶色の服に、黒いズボンを履き、恭弥を指差して糾弾してきた。

「学生が傷害事件なんかしでかしやがって」

机を挟んで剛田と向き合った恭弥は、冷静な態度で聞き返す。

「オレが何したっていうんです?」

剛田いわく、アリオンに不法侵入し、大柴享と如月薫をバッドで暴行した、とのこと。

さらに防犯カメラを破壊して逃走した、とも。

「デイビッドじゃなく亨ってんですか。で、アイツがそう言ったと?」と恭弥。

「しらばっくれようとしても無駄だ」

捜査もせず、証拠もないのに、どうしてオレがやったと?

恭弥がそう聞くと、「証拠はボコボコになった2人の顔だ」と剛田。

剛田が声を張り上げて威圧してきたが、恭弥は冷静に「まずは捜査してください」という言葉を連ねた。

「弁護士に連絡します」と恭弥は言った。

しかし剛田は聞く耳を持たず、部下に命じて恭弥を留置所にぶち込もうとした。

どうやらデイビッドが警察を買収したらしいな、と恭弥が悟ったそのとき…

2人の男がツカツカと歩み寄ってきた。

1人は50代くらいで、上役が着るような制服に身を包んでいる。

署長だ。

もう1人は40代くらいで、スーツ姿に眼鏡をかけた男だった。

2人が登場するや、剛田は敬礼してビシッと挨拶した。

署長はすぐに、剛田を一括した。

「お前は何をやってるんだ! まさか大柴の告訴を受理したわけじゃあるまいな?」

「えっと、容疑者を留置所に連れてくとこですが…」

剛田が捜査もせず、大柴の供述だけで判断していたことを知り、署長は思い切り叱りつけた。

青ざめる剛田。

声を荒げる署長を、スーツ姿の男が嗜める。

「声が大きいですよ」

署長は振り返り、「失礼しました」と恐縮した。

そして署長は、成り行きを見ていた恭弥に頭を下げ、丁寧な言葉使いで詫びを入れてきた。

剛田については、懲戒処分にする、とまで。

いきなりの展開に、恭弥は?を浮かべるばかり。

スーツ姿の男が恭弥を促す。

「この件は署長に任せて、行きましょう」

署長は恭弥にもう一度頭を下げ、丁寧に詫びを入れてきた。

恭弥が外に出た後、中からは剛田を諫める署長の怒鳴り声が鳴り響いていた。
廊下を歩きながら、お礼を口にする恭弥。

そして、相手が誰なのかを尋ねた。

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