第50話

高鳴る心臓の鼓動を感じ、何かピンチが訪れている事を感じる恭弥。

戦場でしか感じた事のない感覚を、高校生の体で初めて感じていた。

ポケットに入れていたスマホが振動し、ディスプレイを見る。

ダエルからの電話だった。

「状況を説明しろ」と単刀直入に尋ねる恭弥。

「知ってたんすか?」と前置きしたダエルは、状況を話し出した。

校外学習に参加しているダエルは今、上峯山の中腹にある宿泊施設にいて、1人で出て来いと脅迫を受けているらしい。

さもなければ、妻と娘を殺すと。

妻も娘も電話に出ない状況に、ダエルは歯を食いしばっていた。

恭弥はダエルに、家の住所と、妻と娘の連絡先をメールするように指示する。

「下手に動くな」と伝え、電話を切った恭弥。

自分だけじゃどうにもならないと判断し、京極に頼ることにした。

すぐに電話して、須賀先生が呼び出されている事、先生の家族が人質になっている事を伝えた。

京極は、警察にも協力をお願いするという。

恭弥は、犯人の心当たりを話した。

オレに恨みのある中国のヤツらかもしれない、と。

京極から人質の位置を尋ねられた恭弥は、それはわからないが電話番号ならわかると伝えた。

京極は、電話番号がわかるなら、もしその電話の近くに犯人がいるなら場所の特定が出来るという。

すぐさま恭弥は、ダエルの妻と娘の電話番号を京極にメールで送った。

部屋を出た恭弥は、母に校外学習に行くと伝えて外に出た。

母は相変わらず心配そうにしてたが、「気をつけてね」と言って送り出してくれた。

エレベーターよりも階段が早いと判断し、スマホを見ながら駆け下りる恭弥。

ダエルに電話し、「お前にも警護人をつけた」と話す。

「俺が絶対に何とかする。それまで耐えてくれ」とも。

「ありがとうございます」とダエルは言う。

「妻と娘を助けたら連絡して下さい。でも、そう長くは耐えられないと思います」

ダエルの表情は怒りに満ち溢れていた。

道路に出た恭弥は、ちょうど客が降りたタクシーを捕まえて飛び乗った。

行き先を告げ、タクシーの中で今度はスミセンに電話する。

ダエルが危険な目に遭っているから、お前も気を付けろ、と。

デパートにいるというスミセンに、ネクサスホテルに向かうよう指示を出した。

スミセンは詳しい状況を聞いてきたが、京極からの電話が入ったためにそちらを優先する。

京極は、ダエルの妻と娘がいる場所がわかったと言う。

「千葉県の船橋市にある花畑農場です」

さらに京極は、恭弥も警護対象なのだから、我々が行くまで安全な場所で待機するようにと伝えてきた。

タクシーでやってきたのは、ダエルからもらった車が停めてある駐車場だった。

鍵を取り出してボタンを押すと、センサーが反応して車の鍵が空いた。

その音を聞き取って車を見つけ、乗り込む恭弥。

カーナビのAIが発動し、人の声で目的地を尋ねてきた。

船橋市の花畑牧場に設定すると、所要時間は30分だという。

その半分、と恭弥は思った。

15分だ。

恭弥が運転する車が、エンジン音を唸らせながら他の車をぐんぐん追い越してゆく。

AIは、速度違反をしている事や、取締区間である事を伝えてくるが、お構いなしで突っ走る。

ドライビングテクニックを駆使して、車同士の隙間を縫うように突き進む。

「神代光輝に電話しろ」と叫ぶと、スマホが反応した。

つながると、「急いでるから用件だけ言う」と前置きして、船橋の花畑農場で須賀先生の家族が人質になっていると伝えた。

「船橋なら、ここから10分もかからねえ」と神代。「だから急がずに待て」

「そんな時間はねえ」と恭弥。

神代に住所を送って、そのまま通話を切った。
目的地の400メートル手前に到着すると、ここからは歩くべきと判断し、車を降りた。

グローブボックスに入っていたドライバーを手に取り、ポケットへ。

スマホは草むらの中に隠して、いざ敵がいる花畑牧場を見据えた。

引用:ピッコマ

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