第49話

暗い部屋の中、ウイスキーのグラスを持った何者かが呟いていた。

「そろそろ始めるとするか。楽しみに待ってろよ」

しばらく平穏な日々が流れ、夏休みを迎えた。

運動部が部室に集まって、食事を楽しんでいた。

2年生は校外学習を明日に控え、ダエル(須賀先生)がちょっとした忠告をする。

夜中に騒いだり抜け出したりしないように、と。

「もしオレに見つかりでもしたら」と言いながら、ダエルは自分の首を手で切る仕草を見せた。

すると根本が、せっかくクラスのみんなと仲良くなれたのに、またイジメられたら…と不満を漏らした。

「そのときは西に言えばいい」とダエル。

隣に座る恭弥は、ダエルにしか聞こえないように、「なんでオレなんだ?」と伝えた。

ダエルは笑ってごまかしてる。

すると根本が恭弥に、「夏休みなんだから先輩も校外学習に行きませんか?」と誘ってきた。

「なんでオレが?」と、素っ気なく返す恭弥。「オレが参加すれば、みんなオレの顔色うかがって楽しめねえだろ」

「そんなことないです。先輩すごく人気あるんですから」と根本。

「嘘つけよ」と恭弥が言うと、「ホントなのに」と根本は呟いた。

食事が終わると、部員たちが帰りの支度をし始め、恭弥とダエルは2人で話し出した。

夏休みや校外学習に参加できる人生を喜んでいたダエルに、恭弥は言う。

「シャフランさえいなければもっと良かったけどな」

ダエルは懐から車のキーを取り出し、それを恭弥に渡そうとした。

卒業するまでは運転しないと言って、受け取らない恭弥。

ダエルから「いつどこで何が起こるかわからないから、もらっておいてください」と言われても、まだ受け取らない。

「事故起こすと思ってビビってんすか?」と言われて、ようやく受け取るのだった。

校外学習を楽しんでこい、と恭弥から言うと、ダエルは表情を曇らせて、「なんか不吉な予感がするんすよね」と不安な表情を浮かべた。

朝9時半まで寝ていた恭弥は、「昔のオレじゃ(こんなに寝るなんて)ありえねえな」と呟きながらスマホを確認した。

「須賀か」と自然に須賀と言ってしまったことに、自分でもちょっと驚く。

ダエルからは、ただ出発するという知らせだった。

根元からは、気が変わったら来てください、と送られていた。

部屋を出て、ちょっとトレーニングしに学校に行こうとすると、母が漢方のスープを差し出してきた。

マンション前の漢方店で買ったから飲んでみて、と。

恭弥はそれを飲むと、母さんの分はないのかと尋ねた。

「恭弥の顔を見るだけで十分」と母。

家を出た恭弥は、白井美紅からの電話を受けた。

これから学校でトレーニングすると伝えると同時に、母が言っていた漢方のお店にたどり着いた。

部室でベンチプレスする恭弥。

かなり鍛えてきたが、まだ元の体ほどじゃない、と思いながら。

少し休んで水分補給すると、美紅が現れた。

トレーニングしにきたのか、と思った恭弥は、自分が使ってない器具を使ってやるように伝えた。

「トレーニングしにきたんじゃないよ、女心がわかってないんだから」

ただ遊びに来た、という美紅は、もうすぐ塾が2日間休みになる、と続けた。

そのうち1日は家族旅行に行くけど、もう1日は私と一緒に遊んでくれない?、とも。

トレーニングする恭弥はすぐに返事をしなかった。

返事を待つ美紅は、ちょっと頬を赤らめてる。

トレーニングがひと段落すると、恭弥は「わかった」とOKした。

「ホント?」と言う美紅は、嬉しそうに両手を頬にあてがって喜ぶ。

恭弥は心の中で、「ったく、こいつをどうしたもんかな」と思っていた。

帰宅した恭弥は、母に漢方薬をプレゼントした。

「お金は?」と聞かれ、「通訳で得たお金で」と答える。

部屋に戻って、今日は充実した1日だった、と満足感に浸っていると、いきなり心臓の鼓動が高鳴り出した。

ドクン、ドクン、ドクン•••

身に覚えのある感覚だが、高校生の体になってからは初めてだった。

戦場でしか感じたことがない感覚だ。

危険が迫っていると、体が教えてくれているのだ。

と、そのときスマホが振動した。

引用:ピッコマ

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